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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第29号 プルトニウム!

実は電力会社と経済産業省は、高速増殖炉ができるものだと決め込んで、準備を始めてしまっていました。

 日本は、使用済み核燃料をヨーロッパに送って再処理をしてもらってプルトニウムを取り出すということをせっせとやっていたのです。日本はこれまでにプルトニウムを44トンも取り出しました。北朝鮮がプルトニウムを10kg取り出しただけで核問題になり、六カ国協議が始まったのと比べれば、どれだけたくさんのプルトニウムを日本が持っているかおわかりだと思います。(北朝鮮は10kg、日本は44トン、トンです。)

 プルトニウムは、高速増殖炉の燃料になるという以外に平和的な使い道はありません。しかもあなたもよくご存じの通り、プルトニウムは核兵器の材料にもなります。そういう意味ではとても危険な物質です。その反面、プルトニウムは持ち運びがとても簡単なきれいな核なのです。つまりプルトニウムは、テロリストにとって持ち運びやすく、しかもそれを使って核兵器を作ることができるおいしい物質なのです。(注意 プルトニウムは放射能という観点からみると持ち運びは簡単なんですが、ひとたび人体に入ると大変危険です。)プルトニウムを持っているということは、それだけでテロリストに狙われることになり、とても危険です。だから国際的な取り決めで、目的もなくプルトニウムを保有することはできないことになっています。

 ところが日本は44トンものプルトニウムを保有することになってしまいました。これは高速増殖炉の燃料なんですと言ってみても、高速増殖炉は五十年以上先の話でしょうと切り返されてしまいます。なんとかしなくてはなりません。

 そこで、うーん、と頭をひねった結果出てきた策が「プルサーマル」です。「プルサーマル」とは取り出したプルトニウムを、ウラン燃料と混ぜて普通の原子炉で燃やしてしまおうということです。本来は、プルトニウムを高速増殖炉で燃やすと、投入したプルトニウム以上のプルトニウムが取り出せて、めでたしめでたしとなるはずなのですが、高速増殖炉が実現せず、プルトニウムばっかり溜まってしまったので、しかたなくウラン燃料と混ぜて普通の原子炉でとりあえず燃やしてしまえというのが「プルサーマル」です。

 持っていてはヤバイものをしかたなく燃やすという点では岐阜県庁の裏金と同じですね。

 困った経済産業省は、「プルサーマル」を「ウラン燃料の節約」と呼ぼうとしていますが、ウラン燃料に混ぜることができるプルトニウムはわずか1割です。しかも、プルサーマルは莫大なコストがかかるので、そのコストの一部でウラン燃料を買ってしまった方がよっぽどお得なのです。プルトニウムが二千倍以上になるといわれる高速増殖炉と比べて、プルサーマルには不必要なプルトニウムを燃やすということ以外のメリットはありません。

 さらに、このプルトニウムをウラン燃料とまぜたもの(これをMOX燃料と呼びます)の検査結果がでっちあげだったことがわかり、日本国内ではまだ「プルサーマル」も始まっていないのです。

 その間に起きた911のテロ事件以降、アメリカはプルトニウムにやたらと気を遣うようになり、日本の保有するプルトニウムに関しても心配しはじめています。

 

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