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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第29号 増税のもと

日本の電力の約三割は原子力発電です。

 原子力で発電するためには、まず、ウラン鉱石からウラン燃料を作り出します。そして、このウラン燃料を原子力発電所で燃やして電力を取り出します。燃やしたウラン燃料は「使用済み核燃料」と呼ばれる燃えかすとなります。この燃えかすは放射能のある大変危険なものですので、きちんと管理しなければなりません。

 いまから四十年ほど前、日本で原子力発電が始まった頃には、このウランの燃えかすである「使用済み核燃料」から将来はプルトニウムを取り出すことにしようと考えられていました。(使用済み核燃料を化学的に処理するとプルトニウムが取り出せるのです)。

 なぜプルトニウムを取り出すかと言えば、プルトニウムを高速増殖炉という特別な原子炉で燃やすと、なんと燃料として炉に入れたプルトニウムよりも多くのプルトニウムが炉から出てくるのです(プルトニウム燃料に混ざっている物質が高速増殖炉の中でプルトニウムに変化するのです)。石油を全量輸入に頼る日本にとって、燃料が増えていくプルトニウムと高速増殖炉の組み合わせはまさに天の助けです。高速増殖炉は日本にバラ色の将来をもたらすと考えられていました。

 ただ、その肝心な高速増殖炉の開発、実用化には三十年かかるといわれ、二十世紀終わり頃にようやく実用化されると思われていました。

 そして日本は原子力発電所をせっせと作り続け、原子力発電の割合が電力の三割近くになりました。その間にウラン燃料の燃えかすである使用済み核燃料も増え続け、この使用済み核燃料は原子力発電所のそばの貯蔵プールのなかに貯め込まれてきました。

 原子力発電が始まって約三十年が経過し、二十世紀が終わりに近づいても残念ながら高速増殖炉は実現できませんでした。「もんじゅ」と命名された技術的問題点を調べる原型炉が稼働しましたが、ご存じの通り大事故を起こして運転がストップしました。

 そして政府は、高速増殖炉が実用化するのは早くて西暦二0五0年以降というようになりました。三十年後にできるはずだった高速増殖炉は三十年経ってみたら、さらにそこから五十年後の技術になってしまいました。

この間に高速増殖炉の開発に取り組んできたのは日本だけではありません。アメリカ、ロシア、イギリス、フランスなどの国々が開発を目指し、そしてみんな断念しました。理論的には高速増殖炉は可能ですが、実現するための技術は非常に難しく、本当に高速増殖炉を実現できるかどうかは今日でも、誰にもわからないのです。

いずれにせよ高速増殖炉の実用化は五十年以上先の話になりました。ところが高速増殖炉の運転のための準備はなぜか先送りされずに、着々と進められています。そして、それがあなたの財布を直撃しようとしているのです!

 

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