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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第23号 『陰謀とあなたの財布』

『陰謀とあなたの財布』

 「陰謀のセオリー」というメル・ギブソンとジュリア・ロバーツが共演した1997年の映画がありましたが、国家的な規模の陰謀の話は、いつの時代でも社会のあらゆるところでもっともらしく、それらしく語られています。

 ジョン・ケネディ大統領はCIAに暗殺されたという陰謀説に関する本はもう何冊も出版されていますし、レオナルド・ダ・ビンチやニュートンがイエス・キリストにまつわるある重大な秘密の隠し場所を二千年にわたって受け継いできた秘密結社のメンバーで、フランスの故ミッテラン大統領もその秘密結社のメンバーの一人だったという話に基づいて書かれたミステリーは、欧米でベストセラーになりました。

 アメリカがイランの革命政権をやっつけるために長年にわたりイラクを支援してきた内容をサダム・フセインに裁判で全てぶちまけられては困るので、実はブッシュ大統領はフセインを匿っているという話もあります。イラクで拘束されたフセインは影武者で、本物のサダム・フセインは整形手術で顔を変えラスベガスに住んでいるのだそうです!?

 そうかと思うと身近な陰謀話もあります。たとえば東京の地下鉄です。市販されている東京の地図をよく見ると、国会議事堂前駅付近で丸ノ内線と千代田線が交差しているものと二つの路線が近づいてはいるけれど交差していないものと二種類あるそうです。どちらの地図も何回も改訂されているはずですが、それにもかかわらず、片方の地図では地下鉄の路線が交差していて、もう一つの地図では路線は交差していないことになっています。

 1984年に僕が留学していたポーランドのワルシャワでは地図は改竄されていました。当時の東欧の共産主義国家にとっては、地図は国家機密であり、市販されている地図は所々手を加えられ、事実とは違いました。2004年の東京でもそういうことがあるのでしょうか。

 もちろんさ、と言う人もいます。地下鉄の国会議事堂前駅の周辺の首相官邸から国会議事堂、そして皇居に至る地下には、戦時中に造られた秘密のXXが…。

 こんな話をさせたら何時間でも話している友人がいます。冷たい雨が降りしきる休日の昼下がり、おいしいケーキを食べながら熱い紅茶を飲み、友人の他愛もない陰謀のうんちくに耳を傾けるのもまた楽しいかもしれません。

 しかし、もしそれが絵空事ではなかったら、そしてあなたの財布を直撃するものだったらどうでしょうか。
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