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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第20号 『異議があります!』

反対できない採決

 シナリオ通りといえば、本会議の採決にもシナリオがあります。本会議の採決の方法は三通りあって、全員賛成の議題ならば「異議なし採決」。これは議長が「ご異議ありませんか」と諮って、「異議なし」と声がかかる採決です。次に、全員賛成ではない議題の採決で、議長が「賛成する諸君の起立を求めます」と声をかけ、賛成者が起立する「起立採決」。そして、最後に予算案や内閣不信任案などの採決に使われる「記名採決」。これは各議員が自分の名前の書かれた木札を、議長の前に置かれた箱に入れていきます。

 全員が賛成するかどうかは、本来、採決してみないとわからないものですが、本会議前の議院運営委員会で、各政党の代表が、わが党は賛成とか反対とか、立場を表明し、その時に反対者がいなければ、「異議なし採決」になり、反対政党があれば、「起立採決」になります。

 問題は、ここで「異議なし採決」ということが決められると、本会議で誰かが反対しても、無視されるということです。さらに、「起立採決」の場合も、個々の議員が起立したかどうかは、確認されません。議院運営委員会で、自民党の代表が、自民党は賛成と言えば、公式記録には「自民党は賛成」とだけ記録されます。

 この通常国会で、私は、産業再生機構の設立法案と原子力発電所に対する補助金の更なるばらまき法案に反対し、起立採決でも起立しませんでしたが、公式記録からは、河野太郎が反対ということは読みとれません。せっせと自分のホームページなり、国会報告紙なりで訴えて、やっとあなたに河野太郎の主張が通じるのです。

 記録に残らなくても反対できる場合は、まだ幸せです。昨年の臨時国会の独立行政法人に関する特別委員会で、私は、財務省が所轄する通関情報処理システムの問題を取り上げました。このシステムは、関税を徴収するためのシステムですが、極めて問題が多く、しかも108億円という年間予算額にもかかわらず、随意契約が続いているという代物で、担当の財務政務官も問題があると認めました。にもかかわらず、法案は取り下げられず採決されることになりました。

 そして、特別委員会の採決の前日、自民党の委員会理事に呼ばれ、「河野君、きみ、明日の採決はちゃんと賛成するだろうね」「いえ、先日の質問でも問題点について全く答えられていませんから、賛成するわけにはいきません」「ああそうかね。じゃ、君、明日は来なくて良いよ」

 日本の国会の委員会では、委員である議員の同意無しに、政党が委員を勝手にクビにすることができます。政党は、委員会での採決で、党の方針に反対することを明言している議員をさっさとクビにして、執行部の言うことを聞く議員に交代させます。このときも、私は即座に特別委員会の委員をクビになりました。

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