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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第19号 『再び不良債権入門』

公的資本注入

 図3の状態に陥った単純銀行がBIS基準をクリアする方法がもう一つあります。自己資本を5万円増やすことです。もし、自己資本が20万円になれば、単純銀行は貸し出しを200万円にまで増やすことができます。貸し渋り、貸し剥がしも無くなります。

 もし健全な収益性の高い企業が増資を求めているのであれば、民間の資金が投資されて済む話です。しかし、脆弱性を抱える銀行の株を、数兆円の規模で買うということになると、民間の資金をあてにすることはできません。そこで法律に基づいて、公的資金を使って銀行の増資を行うことになります。(図6)

 ここで注意することは二つ。まず、公的資金の注入は、銀行を助けるためではなく、日本の金融システム全体、そして銀行から融資を受けている健全な企業を助けるための政策です。公的資金の注入という状況を作り出した経営者は当然にクビになり、裁判でその責任が問われることにもなります。

 第二に、公的資金を利用して購入したその銀行の株は、銀行がリストラされ、業績が上がった時点で売却されます。購入した価格と同じ価格で売れれば、国(国民)は損をしません。購入した価格を売却価格が下回ったときに、国が損をすることになります(損の分が税金で穴埋めされます)。反対に売却価格が上がっていれば得になります。公的資金の注入イコール国民の血税を使うということではありません。

 金融庁や自民党の長老が主張し続けるように、今の日本の金融システムに問題がないということはありません。特に銀行の経営には大きな問題があると思います。日本経済を再生するためには、ここで思い切った決断が必要です。

単純銀行のモデルは、渡辺孝著『不良債権はなぜ消えない』を参考にしました。

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