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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第15号 『本音の構造改革』

地方財政

 財政を改革するためには、国と地方の関係を大胆に改革しなければなりません。

 税収を国と地方に分けてみると、国税が六に対して地方税が四というのが現在の税収構造です。しかし、歳出面で見ると国の歳出が四に対して、地方の歳出が六になっています。つまり国の一般会計の三七%は、地方交付税、補助金という形で地方自治体に対して支出されています。ここにメスを入れない限り国の歳出構造は変わりませんし、国が取りすぎた税金を地方に分配するしくみのなかに、無駄と非効率、そして不公平が発生します。

 人口八百五十万人の神奈川県と人口八十一万人の高知県を比べてみましょう。人口比は一〇・五対一です。平成十年度の神奈川県の県税は約九千五百億円、高知県の県税収入は八百億円に達しません。しかし、県の予算額は、神奈川が一兆七千二百億円に対し、高知県は六千六百億円、その比はなんと二・六対一に縮まっています。国から地方に分配されるカネをみてみると、神奈川県の地方交付税七百億円弱に対し、高知県はなんと二千億円。県民一人あたり神奈川県は八千円、高知県は二十五万円。国庫支出金は、神奈川県が二千九百億円、高知県が一千四百億円。一人あたりはそれぞれ三万四千円と十七万円。

 今の地方財政の現状は、財政を健全に保つよりも、補助金をもらい、地方債を発行し、歳出を増やした方が得になる構造になっています。補助金の出る公共事業を実施するときも、半分を国の補助金で、残り半分の地方自治体の負担分は地方債を発行し、その返済を中央から来る交付税でまかなうなどということが平気でまかり通っています。いわば他人の財布のカネである補助金、地方交付税をあてにする財政運営をやっているわけです。不必要な施設であっても、他人の税金で造れるならば,造ってしまえという甘えの構造を変えていくことが必要です。

 自分のお金でやりなさい、必要なお金は地方税を増税して集めなさいと言われたら、大阪府は本当にオリンピックをやるでしょうか。愛知県は万博をやるでしょうか。私は、大阪オリンピックにも、愛知万博にも反対です。サッカーのワールドカップ用に造られた各地の巨大競技場の稼働率を考えれば、大阪にできる施設が二〇〇八年以降無駄になるのは明らかです。長野オリンピックの教訓から何も学ばないプロジェクトを進める自治体に、国税を分配する必要はありません。いまだに何をやるのかすら決まっていない万博も同じことです。

 財政構造改革の第一歩は、国税の大幅な減税と国税による税収の再配分の停止、そして、地方に大幅な課税自主権を認め、地方の行政に必要な税を地方が徴収することを認めることです。もちろん地方によっては、地方税の大幅な増税が必要になるところもあるでしょう。そうした自治体では、首長も議会も正面から増税の必要性を住民に訴えなければなりません。あるいは、近隣の自治体よりも特定の税金を安くして、企業を誘致しようとする自治体も出てくるでしょう。いずれにしても経営手腕の確かな首長と議会を選べば、地域が発展して、暮らしが良くなっていくわけです。どんな首長を選ぶかが、自分の税金の額につながっていくことになれば、今まで以上に地方選挙に対する住民の関心が高まっていくはずです。

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