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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第14号 『今だから話せる』

今だから話せる

6月25日

 投票日。朝、ゆっくりと寝て、昼前に八重咲町の旧農業会館の投票所へ。

 (前回の選挙の時は、投票して出てきたら、フジテレビの出口調査に呼び止められて、調査され、候補者が出口調査されるなんて前代未聞と笑われた)

 午後からベルマーレのホームゲーム。袖スポンサーのブルームバーグ社のファルマン支社長夫妻と観戦。

 午後八時過ぎて、出口調査の結果が良いとNHKが報道。ほっとする。十時にNHKが当確を打つ予定だから、九時半頃から待機して、と事務所から連絡。風呂入って、ひげ剃って、着替えて、九時半過ぎから選挙事務所のすぐそばに車を止めて、液晶テレビの画面をのぞき込む。

 十時。なにも起こらない。拍子抜け。

 十時半。なにもなし。不安と冷や汗。

 TVKが当確。民放が他にも当確を出し始める。安心。

 十一時。NHK動かず。おいおいおい。

 (NHKは、当確を打つために、地元記者の票読み、直前の世論調査、当日の出口調査、そして開票状況の四つの要素をコンピュータに入れて、コンピュータが当確を出す。だからNHKは、必ず、開票が始まらないと当確を打たない。八時直後で、まだ全体の開票が始まっていないのにNHKの当確が打たれる選挙区は、離島のように繰り上げ開票をやっている地域があるところ。

 河野太郎は、最初の三つの要素はクリアしていたにもかかわらず、茅ヶ崎の最初の開票が、共産党トップ、社民党ゼロという発表だったために、コンピュータの予測枠をはみ出し、当確が出なかったそうだ)これ以上、選挙事務所にお集まりいただいた方にお待ちいただくわけにはいかないということで、NHKを待たず、万歳。直後にNHKで当確。(ちなみに、前回も当確が遅れた。理由は、私の陣営から立会人に出てくださった方が、双眼鏡を持って見に来た仲間にブロックサインで票数を知らせようとしたところ、選管から、注意を受けた。ところが、そのすぐ横で、他陣営の立会人が携帯電話で票数を外に伝えていた。ブロックサインはだめで、携帯電話は良いというのはおかしいと、彼が抗議をしている間、河野太郎の票の発表は止まってしまった。本人は、大まじめだったが、その間、候補者と事務所は票が伸びなくて、真っ青になっていた。)

 同期の代議士、ばたばたと落選。比例代表も自民党、全く票がのびず。それにもかかわらず、総裁、幹事長のコメントは、「与党が国民の信頼を頂いた!」 強い違和感を覚える。この人たちは、負けたと思っていないのか?


6月26日

 愛媛の塩崎恭久代議士の携帯電話を鳴らす。「シオさん、冗談じゃないぜ。執行部は、この結果をなんだと思っているんだ」話は、首班指名のことも含め考えようということに。そう、全ては、ここから始まった。

 この日に出した「ごまめの歯ぎしり」メールマガジン版で野中幹事長に、いちゃもんをつけた格好になった。さらにそれが夕刊フジに取り上げられ、波紋が広がる。


6月27日

 各選挙区ごとに選挙会という会議が開かれ、ここで選挙結果が確定。法律的には、ここで、代議士の誕生となる。

  仲間の代議士に電話をかけまくるが、みんな地元の挨拶回りで連絡が取れない。かかってくれば、今度はこっちがいない。





明日を創る4人(左から塩崎、河野、石原、渡辺)
        =毎日新聞社サンデー毎日提供=





6月28日

 横浜の県選挙管理委員会で、当選証書の交付式。

 当選証書には、河野太郎という名前の横に、住所が記され、ブルーハイツ205号とまでしっかり書かれているので、コピーして大家さんに差し上げる。

 早速、自民党の国会対策委員会から、常任委員会の希望を第三希望まで出すようにとの通知が来る。その最後に、「従来通り初当選の方は、次の委員会にはご希望に添いかねますのでご了承下さい。

 農水委員会、商工委員会、運輸委員会、建設委員会、予算委員会、国家基本政策委員会、憲法調査会」この体質がもう古い。

 外務、商工、逓信の希望を出す。

残念ながら落選した同期の代議士に、どうやって電話していいか、考えたあげく、やっぱりちょっと待つ。


6月29日

 宮中で行われる皇太后さまのお通夜の行事の案内が新議員に来ていたので、あわててモーニングコートと黒ネクタイという服装で参上しようとするが、日付を一日間違えていた!


6月30日

 モーニングコートに黒ネクタイ、喪章で宮中へ。

 議員会館は、落選した議員の部屋の引っ越しがどんどん進む。荷物の運び出しが終わった部屋から順次、床のワックスがけが行われている。第二議員会館の二階はだいぶ入れ替わりがあった。


7月1日、2日

 日本の総理大臣を決めるのは、衆議院で行われる首班指名。首班指名の一回目の投票では、過半数が必要になる。過半数を取った者がいないときは、上位二名の決選投票。塩崎・河野戦略は、首班指名の一回目に白票を投じる人間を集め、決選投票に持ち込むこと。そうなれば、執行部もことの深刻さに気がつく(あるいは深刻であることを認める)だろう。

 せっせと電話をかけるが、電話で話をしても、らちがあかない。こういう話はやっぱり面と向かって話をしないと。

 第二次森内閣の閣僚の予想がマスコミをにぎわす。派閥均衡、年功序列そのもの。そのおかげで負けたんじゃないか!


7月3日

 足らない。首班指名に白票を投ずるということは、ほとんどの議員にとって、非常に高い心理的ハードルになっている。過半数割れに必要な数には、ほど遠くなりそうだ。

 明日の特別国会開会を控え、塩崎代議士の愛用の隠れ家(バー)で夕方会うが、ほぼギブアップ。あとは言い出しっぺで責任取って、玉砕するかどうか。

 夜、田中真紀子代議士から、足らないんじゃ仕方がない、玉砕するのは馬鹿だからお止め、というメッセージ。


7月4日

 特別国会開会。

 当選証書と名刺を持って、国会正面の大階段を上る。

 (さあ、中学校の公民の復習をしましょう。国会には、総選挙が終わった後、新しい総理大臣、新しい政府を選ぶために開かれる特別国会、次年度の予算を決める通常国会、そして臨時に開かれる臨時国会の三つがあります。総選挙の後に開かれる特別国会は、つまり、衆議院の任期中、一回だけです。この特別国会の初日に国会に初めて登院するときだけ、あの国会の建物の真ん中の正面玄関から入ることができます。そこを通って入ったところで、当選証書を確認し、議員バッジが交付されます。この時以外は、正面玄関を通ることはできません。開会式に出席される天皇陛下だけが、この正面玄関をお使いになれます。

 主権在民、そして国会が国権の最高機関というならば、有権者が国会に来るときは、正面玄関から入るべきだと思うのですが。

 議員バッジは、当選するたびに、第何回総選挙と裏にかかれた新しいものを一つもらいます。予備の議員バッジには、ただ衆議院とだけ書かれています。

 通常国会は、毎年、一月半ばに開かれ、会期は百五十日間、つまり、六月半ばまでです。ただし、一回だけ会期延長することができます。

 臨時国会は、臨時といいながら、秋に必ず開かれます。時には、秋に二回開かれることもあります。

 ちなみに、「総選挙」というのは衆議院の選挙のことで、参議院選挙のことは言いません。ちなみに、日本国憲法第七条4項に、「国会議員の総選挙の施行を公示すること」とあります。国会議員には参議院も含まれますから、この憲法には、誤りがある、第七条4項は、「国会議員の選挙」でなければならん、だから憲法改正が必要だと主張される方がいらっしゃいます。まあ、そうまでこじつけなくても、と思いますが)

 登院すると、まず、身元を確認するために名刺を出してくださいといわれます。名刺で身元確認? といつも不思議に思いますが、国会は、名刺主義です。

 議員バッジをもらって、院内、議員会館で最後のあがき。本当の勝負時が必ず来るから、玉砕はやめろ、とあちこちから。それじゃあ、両院議員総会で、一言言わせてもらいます。

 両院議員総会。幹事長報告。総裁挨拶。そして初当選議員の年齢順の紹介。最後が小渕優子。小渕優子代議士が立ち上がり、挨拶し、座る。ここで「他にご発言はありませんか」と議長が呼びかけるのが普通なのだが、なぜか、「それではこれで閉会…」

 反射的に立ち上がり、右手上げて「ギチョーっ…発言させてください。河野太郎でございます。」一瞬静寂。

 後ろから、「おい、黙ってろ」「もう閉会だ、閉会だ」とヤジがとぶ。振り返ってにらみつけると、静かになった。

 「今回の選挙で、自民党は、有権者に増税などの苦い薬を飲んでくださいと訴えたわけではない。たんたんと選挙戦を戦っただけだ。しかし、それなのに、271議席が233議席に大きく減ってしまった。私の選挙区では、河野太郎には十二万と一票頂いたが、自民党にはその半分以下の五万九千票しか入らなかった。そして、これは都会だけではない、地方でも同じことが起きている。今回の選挙結果は、明らかに、有権者が今の自民党ではだめだと言っているんだ。自民党よ、変われ。さもないと…と、有権者が我々に匕首を突きつけているのがわからないのか。

 この選挙結果を見ても、まだ、執行部は派閥均衡、年功序列人事を行おうとしている。これまでのそうした自民党的な体質が否定されたのではないか。

 今の総裁、幹事長の挨拶を聞いていると、ことの重大さを全くわかっていらっしゃらないように思える…」

 最初は、冷静に、穏やかに始めたつもりが、だんだん興奮して、声がでかくなってきた。最後の方は、ほとんど、駅頭で、「ごまめの歯ぎしり」を配っているような調子になっていたらしい(なんてお前の声はばかでかいんだ!、と)。

 二期目は、この思いを大切にしてやっていきます。

サンデープロジェクト(テレビ朝日にて)

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