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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第7号 『まず大臣のたらい回しをやめよ!〜1998.10〜』

なんじゃこりゃ?なんとも不思議な委員会質問
家電リサイクル法案

 火曜日。普通の火曜日になるはずだった。朝五時半に起きてシャワーを浴び、六時のニュースをスポーツまで見て、六時三十四分の平塚始発に乗る。八時に党本部で始まる会議にぎりぎり間に合って、九時四十分に院内で開かれる国会対策委員会に走っていく。三十分後に議員会館に戻り、院内テレビをつけ、パソコンを立ち上げて電子メールをチェックし、返事を書き……
 その時、院内テレビでは商工委員会で小此木八郎代議士が質問に立っている様子が映っていた。あれ、なんか変だぞ。
 次の瞬間、上着をひっつかんで、廊下を商工委員会の部屋に向かって駆けだした。
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 家庭で使わなくなったテレビや冷蔵庫といった家電製品を、生産したメーカーに引き取りを義務づけ、資源の再利用に取り組ませることを狙った家電リサイクル法案を、政府が国会に提出した。環境問題とエネルギー問題に取り組むわが太郎塾でも、早速、テーマに取り上げた。ところがどうもこの法案、骨格はできているものの、詳細があまり明解ではない。結局、数ページにわたる疑問点が浮き彫りになった。
 国会の委員会には、「差し替え」という「便利な」制度がある。委員会のメンバーでなくとも、どうしてもこの問題は質問したい、というときは、その日だけ誰かに委員を交代してもらうことができる。そこで、石原伸晃商工委員会筆頭理事にお願いして、この法案の質問をやらせてもらうことになった。ところが、「この法案つるされているから、質問は、いつになるか、わからないよ」「えっ、何がつるされてるの?」
 (今の日本の政治のしくみでは)政府が国会に提出する法案を、与党である自民党が全て事前にチェックし、承認し、党議拘束をかけることになっている。その結果、政府が提出する法案には、自民党の議員は、必ず賛成することになっている。そして、自民党が過半数を占めている衆議院では、政府提案の法案は、必ず可決されるのである。いや、違った。政府提案の法案が、審議され、採決されれば、必ず可決されるのである。というのも、数で劣る野党は法案の審議、採決をさせないという戦略をとるからである。
 国会に提出された法案について、議院運営委員会(略して議運)が、審議する委員会を決定する。これがくせものである。法案の審議をさせたくない野党が、委員会の決定を一筋縄では認めないのだ。国会に提出されたものの、委員会審議に入れない状態を「つるし」という。
 このつるしを解くために、与野党の国対と議運の幹部メンバーによる根回し、駆け引き、会議、会談、その他(あとは書けない)が行われる。俗に「国対族」といわれる議員は、このプロセスのプロである。
 この国対の駆け引きのことはよくわからないが(部外者がわかるようではきっと関係者は困るのだろう)、ときどき、この法案はあきらめるから、こっちの法案は審議に入らせてくれなどという交換材料を出すこともある(らしい)
 例えば、「砂漠化防止条約」なども政府から国会に提出されていたが、これも、この与野党の駆け引きの材料に使われて、全く審議されなかった。(こうして地球は確実に砂漠化するのである)
 ずっとつるされていた法案が審議されて、採決されたら与野党全員が賛成で可決なんてことがよくある。どうも今の野党は、法案審議を遅らせたり、成立しない法案を増やせばそれでいいらしい。特定の委員会の審議がとんとん拍子に進みすぎると、その委員会の野党理事の面子がなくなるらしい。ときどき、野党理事の面子を立てるために、この委員会の審議を少し滞らせろ、などという指令が出ることがある。
 もちろん与党側にも問題はある。すべての法案に法案提出時から党議拘束をかけているため、委員会で議論してもその委員会の一存では何一つ原案修正ができず、委員会は、いや、国会そのものが、単なるセレモニーとなってしまうのである。
 与野党とも、これまでの国会運営を大幅に変え、国会で、内容ある議論ができるように努力をしなければ、国会は単なるお飾り機関になってしまう。
 行政の情報公開も大切であるが、国会の中で何がどう動いているのか、その本当のところを情報公開することも同じように大切である。
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 家電リサイクル法案は、省エネ法改正案、地球温暖化防止法案とセットで、この与野党の駆け引きのなかでつるされていた。どれも今国会では審議入りできないだろうという声が一時は出ていたぐらいだ。ところが、なぜか突然、家電リサイクル法案と省エネ法改正案のつるしがとけ、商工委員会におりてきた(通産省が猛烈に根回ししたらしい)。それを受けて、月曜日に商工委員会理事会が開かれ、急遽、火曜日に両法案一括で質疑、金曜日には本会議で採決という日程が決まった。
 そこで石原筆頭理事が僕に連絡を取ろうとしてくれたらしいが、あいにくこっちは月曜日なので(月曜日には本会議、委員会は通常開かれない)地元にいて、しかも携帯電話を持っていなかった。しばらく探して駄目だったので、「それじゃあ小此木君、明日の質問やって」ということになったらしい。
 そして、火曜日。院内テレビをつけたら、家電リサイクル法案の質問が始まっていたから、こっちはぶったまげてすっ飛んでいった。石原筆頭理事は、汗だくで、肩で息している僕を見て、「ごめん、昨日連絡つかなかったから。今度何か別なときにやってよ」
(結局、金曜日の家電リサイクル法案の本会議採決は欠席した)
 河野 「さて、この日英原子力協定に基づいて、イギリスから例えばプルトニウムを日本に輸送する場合、現在は海上保安庁が護衛にあたるわけでございますが、政府のお考えでは、将来的に海上自衛隊がこのプルトニウム輸送の護衛につく可能性はあるのでしょうか」
 外務省事務方 「えー、ただいまお尋ねの件でございますが、えー、ムニャムニャムニャ(中略)で、ムニャムニャムニャ(五分略)、ムニャムニャムニャということでございます」
 河野 「すみません、今のお答え、よくわからなかったのですが、結論から言うと、可能性はあるのでしょうか」
 外務省事務方 「えー、ムニャムニャムニャ(以下、前と同じなので省略)ということでございます」
 河野 「私の耳が悪いのか、頭が悪いのか、今のお答えだと可能性が有るのか無いのか、わかりませんでしたので、有るのか無いのかだけ一言でお答え下さい」
 外務省事務方 「えー、ムニャムニャ(三分略)ということです」
 河野 「ちょっと事務方のお答えだと意味が良くわからないものですから、外務大臣、可能性が有るのか無いのか、一言でお答え下さい」
 小渕外務大臣(当時) 「えー、河野委員の今のご質問には、事務方から答えさせます」
 河野 「!?!?!」
 外務省事務方 「えー、(最初と同じなので略)ということでございます」
 委員会事務局からのメモ「質問時間が終わりました」
 河野 「いいですか、これは政府が提出なさった案件でございます。政府が締結された協定に対して国会の承認を求められているわけです。その審議をしているのに、質問に政府が明解な答えをしないのはどういうわけですか。質問にお答えをいただけない以上、私はこの案件を承認することはいたしません。以上で質問を終わります」
 国会答弁では、政府は必ず逃げる。しっぽをつかまれないことだけを目的に答弁をする。だから、委員会でもほとんど議論らしい議論がない。なぜかといえば、大臣、政務次官が答弁に立つべき質問にも、(短命な大臣では勉強不足で答えられず)官僚が答えなければならないからである。細かいデータやら、事実関係を官僚に答えさせるのはいいが、政府の方針、政策までも官僚に答えさせるから、ひたすら逃げの答弁になる。国会で本当に内容ある議論を行うためには、大臣、政務次官が堂々と答弁に立つようにならなければ駄目なのである。
 外務委員長 「それでは採決をいたします」
 反対した。騒ぎになった。 でも、なかにはかばってくれた先輩も……
 福田康夫外務委員会筆頭理事 「俺の席からは、(採決の様子が)良く見えなかった。まぁ、いいんじゃないの。彼、なかなかユニークでおもしろいよ」
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