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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第6号 『日本外交を考える〜1998.3〜』

イラク問題

「イラク問題」とは、一口で言えば、「世界規模のオウム事件」です。
一人の狂人的な独裁者が、サリンより十倍強力なVXガスを二百トン、致死率の極めて高い炭素菌やポツリヌス菌を三万リットル隠し持っているという問題です。
 サダム・フセインは、毒ガスをイラン・イラク戦争で実際に使用して、三万人の死傷者を出しました。
しかし、イラクは、湾岸戦争で大敗し、毒ガス・細菌兵器を、完全に、将来にわたって廃棄し、廃棄の過程を国連に無条件に査察させることになりました。(国連安保理決議六八七)
 ところが、ここ数年、飼料工場のはずのところに査察チームが入ると、細菌兵器の工場であったり、VXを作る過程でできる物質が大量に見つかったり(フセインいわく、「平和利用」するそうですが)、結局、亡命した政府高官があっさりと、禁止されている兵器やミサイルの開発計画が進んでいることを暴露してしまいました。
そして、フセインが苦し紛れに査察団の調査を拒否したのがイラク問題の発端です。
 そこでアメリカが、イラクに対し、「即時、無条件、継続的な査察」を受け入れるように圧力をかけ、さもなくばこうしたガスや細菌兵器があると思われるところを爆撃すると通告し、緊張が高まりました。
 中途半端な査察では、ガスや細菌がたらいまわしに隠されてしまいますから、この問題を解決するためには、査察チームがいつでも、どこでも査察に入れること(「即時、無条件、継続的な査察」)が必要なのです。
しかし、サダム・フセインがこうした査察を拒否している以上、なんらかの圧力をかけないとフセインは査察を受け入れないでしょう。
だから、アメリカは爆撃するぞ、と脅したわけです。しかし、仮にアメリカが空爆しても、すべてのガスや細菌を破壊しつくすことはできませんし、研究施設もいくつかは残るでしょう。
そして、いったん爆撃をしてしまったら、フセインは二度と査察を受け入れることはないでしょう。つまり、空爆は解決策ではなかったのです。
 アナン事務総長は、フセインのメンツをたてながら、アメリカの圧力を最大限に利用して、査察をイラクに認めさせ、最良の結果をもたらしました。(うーん、すご腕)。
しかし、 アメリカがあれだけの軍事力を集結させなければ、事務総長との会談でもフセインは妥協しなかったでしょう。
 空爆自体は解決策ではないが、空爆の用意がなければ、解決策を生み出すことができなかったのでしょうか?
あなたは、どう思いますか?
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