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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

号外 『敗軍の兵、将を語る〜1998.8〜』

敗軍の兵、将を語る

七月十五日の晩から十六日の午前中にかけて、「私」は総裁選挙を戦っていました。
 七月十五日の午後には、小渕さん以外に総裁選に名乗りをあげる者がいないのではないかという見方が非常に強くなりました。このままでは無投票で小渕総裁が誕生する、それで本当にいいのか。十五日の晩、若手代議士数人で、なんとかしなければと話し合っている席で「小渕さん以外に立候補者がいなければ私が出馬します」と覚悟を決めました。
 自民党の総裁選挙に立候補するためには二十人の推薦人が必要です。これは相当高いハードルで、小泉純一郎代議士も一回目の出馬の時にはこの推薦人を集めるまでものすごく苦労したそうです。もし、絶対の本命と思われている小渕さんを相手にして、一回生が、二十人の署名を集めて立候補すれば、日和見で動かない先輩達にはかなりのショックになるでしょう。
 十五日の晩から十六日の朝にかけて一回生八人の署名が集まり、さらに五人が「小渕さんしか立候補しないなら、推薦人を引き受ける」と約束してくれました。よし、あと七人、手分けして頼もうというところへ「梶山静六出馬」の一報が入り、静かに河野太郎陣営は旗を降ろしました。
 最終的に、小渕恵三、梶山静六、小泉純一郎の三氏が立候補しましたが、私は梶山さんを支持いたしました。
 一、次の内閣は、橋本内閣の財政構造改革から景気回復に軸足を移さなければなりません。橋本内閣の重要閣僚として最後まで橋本首相の政策を支持しつづけた二人よりも、野に下って橋本路線を批判してきた梶山さんのほうが確実に政策変更ができると思いました。
 二、経済再建のためには、金融問題の解決を図らなければなりません。三人の中では、梶山さんが一番この問題を研究してきた候補者でした。
 三、小渕派が担いだ小渕、三塚派が公式に「派閥の候補者」として認定した小泉両氏では、派閥のしがらみを認めてしまうことになります。派閥を離脱し、派閥ではなく、議員個人が集まって推す梶山さんならば、派閥の形態にも変化をもたらせるのでないかと期待しました。
 残念ながら、期待していた決戦投票に持ち込むこともできずに小渕新総裁が誕生しました。不満ではありますが、正式な手続きで決定した総裁ですから、異論を唱えることはしません。誰であれ、今度のリーダーは、最重要課題である経済再建のために、大袈裟に言えば命を懸けなければならないわけですから、一国会議員としてリーダーの決断を助けていくつもりです。
 今、はっきりとわかっていることは、業界や団体の利害調整を中心にした内向きの政治手法はもはや通用しないということです。外国政府や市場に翻弄され、右往左往する政府では国益を守っていくことは出来ません。これからの日本の政治は、経済政策を初めとして、日本の主張を国際社会の中できっちりと通していかなければなりません。
 年功序列で大臣ポストをたらい回しにしてきた世代の政治家、派閥を中心に物事を考えてきた政治家には、これからの国の舵取りはできません。日本の将来を考えると政界、特に自民党内の世代交代が絶対に必要になります。
 私も、当選回数は少なくとも、皆様に選ばれたということでは国会の大先輩とも対等な立場にあるわけですから、臆することなく発言して参ります。 そして、今日、なによりも急がれる経済対策に全力を注ぎつつ、世界で通用する政治家を目指し、研鑚を積んでいくつもりです。
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