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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第4号 『なぜ「河野案」はなかったか〜1997.7〜』

過去の亡霊

第3号でお話したように、私は臓器移植には賛成ですが、脳死を法律で決めることには反対です。
とくに中山案のように、厚生省のお役人が出てきて、こうなったら人間は死んでますなどという基準を行政が作るなどというのはとんでもないと今でも思っています。
他方、金田案というのは、まだ生きている人間から臓器移植をさせようという、これも納得できない法律でした。
そこで、中山案をベースにしながらも、厚生省が脳死の判定に関与することをやめさせる修正案を衆議院の法制局の力を借りながら作成し、記者会見までやりました。(ごまめ3号参照)
 日本の国会法では、議員が一人で法案を提出することはできません。提案者の他に二十人の賛成者の署名が必要です。(予算に関連する法案は五十人の賛成者が必要です)。
法制局にもらった黄色い罫線の入った用紙に、神奈川の先輩が第一号の署名をしてくださり、同じ一回生の仲間が続いてくれました。
賛成者の署名が揃ったら、どこにどうやって「河野案」を出せば よいのか衆議院事務局に問い合わせにいくと、「署名がそろいましたら、自民党の場合は幹事長、総務会長、政調会長国対委員長の四人のハンコを添えてご提出下さい」。「いや、これは議員立法なんですが」、「議員立法の場合でも、自民党の所属議員が法案を提出するときには四役の了解が必要です。
 第十三国会の昭和二十七年四月二十四日に自由党の増田甲子七幹事長から、四役の署名の無い法案提出は認めない旨の申し入れがあり、それが前例になって昭和三十年の保守合同で自民党になってからも幹事長が代わるたびに幹事長のお名前で衆議院宛てに申し入れがございます。
加藤幹事長からも申し入れが来ております」。「げげっ」。
さっそく国対の控え室に行って、「臓器移植法案の河野修正案を出したいので、四役のご署名をいただきたいのですが、どのような手続きをすればよいですか」と聞くと、「そんなもんだめだ。四役はみんな中山案を了承して署名ずみだ」、「いや、四役のご支持はいりません。提出するための形式ですからハンコだけください」、「二つの案に署名なんかできるわけないだろ」、「いや、これは党議拘束がないはずですが」。
押し問答の末、「XX党へいってみろ。あそこは議員が勝手に法案出せるから。だれかに頼んでこい」。
で、提案者をXX党某代議士、河野太郎は賛成者にまわるということでどうかと衆議院事務局に尋ねると、「賛成者に一人でも自民党の代議士がいる場合は、自民党四役のご署名が必要になります」、
「うへーっ」。さすがにXX党で二十一人集めてくれとは頼めずに困っていると、厚生委員会の佐藤剛男理事が、「河野案どうした」、「いや、参りました」。

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