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核燃料サイクルは破綻している
 
 

六ヶ所村に使用済み核燃料の再処理工場が造られ、この工場の稼働が迫っている。

問題は、この工場の稼働が本当に必要なのかという議論が極めていい加減に行われてきたことだ。

単純に言うと、この工場の稼働を稼働させることなく凍結すれば国民負担は4兆円で済むところを、ひとたび工場を稼働させると(つまり核で工場が汚染されることになると)国民負担は十数兆円にふくれあがる。

ここでそういう計画だからと議論無しに稼働を強行すれば、年金とグリーンピアのようなことになる(つまり負担が顕在化した時に、なんであのときにそんな馬鹿なことを止めなかったのか、と)。

再処理工場とは、ウランを原発で燃やした時に出てくる使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す工場だ。

本来、プルトニウムを取り出して高速増殖炉で燃やす予定だったのが、95年のもんじゅの事故で高速増殖炉の実現が極めて難しくなり、プルトニウムを燃やすことができなくなった。

通産省はあわてて高速増殖炉に代わり、プルサーマルという敗戦処理技術(あまりメリットがない)を位置づけたが、これも計画通り進まない。

ところが再処理だけはヨーロッパに委託したり、東海村で始めたりと先行してしまった。その結果、六ヶ所村の新工場を稼働させる前でもプルトニウムがどんどん貯まり、いまや国内に38トンもある。IAEAの査察費用のかなりの部分が日本のプルトニウムのために使われている。日本国内にあるはずのプルトニウム量と実際の量の誤差(MUFという)が200kgもある。

プルトニウムは、ウランの何万倍もの発ガン性を持つ極めて危険な物質であり、わずか5kgで核爆弾ができてしまうため警備が大変で、さらにコストも非常に高いというデメリットがある。

六ヶ所村の再処理工場を稼働させると、さらにこのプルトニウムが貯まっていく。

六ヶ所村の工場本体は当初計画で8000億円のはずだったのが、建ててみたら三兆円もかかった。

しかもステンレスの溶接という確立された技術を使ったところにひび割れが発生するという問題が起きている。

六ヶ所村の工場ではジルコニウムとステンレスの配管を異材継ぎ手という新しい技術でつないでいるところが何万カ所だか何十万カ所だかある。動燃の東海村の再処理工場も当初の稼働率は無茶苦茶低かったことを考えると、六ヶ所村の工場の稼働がスムーズにいくとは思えない。

再処理した時の総費用は11兆円と言われているが、これも発表の半年前には16兆円と言われていた。

11兆円という数字は、通産省がでっちあげた原発の発電コストである5.9円よりも高すぎず(高すぎれば再処理を止めろと言われる)、ある程度高く(ある程度費用がかかることにしないと電力会社に国が補助を出せない)という観点から創られた数字なのだ。

だから、国民負担がいくらになるかやってみなければわからないというのが現実なのだ。

2005年といわれる再処理工場の稼働開始を凍結し、再処理が本当に必要なのか、コストがいくらかかるのか、ということを検証し、きちんと合理的に議論してから結論を出すべきだというのが我々の主張だ。

原子力発電が、夏場の一時期の需要期を除き必要不可欠でもないということは、去年の原発の全面運転停止でも立証された。

本来ならば、水素ベースのエネルギー路線に転換するための研究開発や自然エネルギーで本当にどこまでやれるのかという政策転換が必要なのだが、それを担当する経済産業省は、自然エネルギーを殺している。自然エネルギーが着実に増加すると、原子力はいらないではないかという議論になっていくことをおそれている。

電力会社に対して自然エネルギーによる発電を求めたRPSという制度でも異様に低い数値設定をして、しかもその設定が前半は極端に低く、2010年以降は現在、設定がないという新規事業者の参入を阻止するための設定になっている。このため、風力発電に関しては、日本には未来がないような状況だ(風力発電事業者は2010年以降の需要を示せないために、そこから先の資金手当をすることができない)。

太陽光発電に関しても、ドイツが80円相当で買い入れるという法改正をして、先頭を走る日本に追いつこうとしているのに対し、日本はまったく逆を行っている。日本の太陽光発電のためのパネルメーカーも日本市場を相手にせず、ヨーロッパ、特にドイツを狙っている。

競争力のない産業を整理し、新たな産業を興すということが国策になりつつあるこの時代に経済産業という名前を持つ役所が、新規産業の有望な種を省益のために平気で殺している。

政治は何をやっているのかと言えば、自民党の電力族と経済産業省べったりの政治屋どもは民主党の電力総連の息がかかった議員どもと一緒に、電力の自由化が叫ばれているこの時代に、原子力発電は国策と位置づけようと必死になっている。

なぜ原子力を国策と位置づけたいかといえば、国策ならば国が金を出しても当然という議論ができるからだ。

つまり電力会社は原子力発電を維持しきれなくなっている。原発でウランを燃やした時に出てくる使用済み核燃料の処理ができなくなっているのだ。

電力会社の経営にとって、原発のバックエンドをどうするかは極めて大きな経営判断になる。電力会社は自分の会社が負担するよりは、血税で尻ぬぐいをしてもらいたい。

経済産業省は自分たちの政策ミスを表には出したくないし、天下りやらなんやらのおいしい蜜である原子力を維持したい(まさに厚生省の年金と同じだ)。

政治家は原発によって地元に落ちる補助金を維持したい。労組は原発による雇用を維持したい。

ババを引くのは一般納税者、高い電力を買わされる消費者、そして地球環境ということになる。

自民党の中でエネルギー問題の責任者を務めたこともある亀井善之農水大臣も、自らの著作の中で原子力はもはや国策ではない、見直しが不可欠だと訴えている。

にもかかわらず、与野党の中に暴走する議員がいる。

グリーンピアの悲劇を目の当たりにして憤慨している納税者よ、今、原子力政策の見直しを求めて立ち上がれ。

年金問題で特集を組んでいるマスコミよ、原発の問題の特集を組め。今、動けば十兆円以上の国民負担をストップできる。

電力会社、特に東京電力は、自らの都合で六ヶ所村の再処理工場を稼働させたがっている。

原子力発電所は、運転すればかならず燃やしたウランが使用済み核燃料となって出てくる。日本の原発が抱えている直近の課題は、この使用済み核燃料を貯蔵するスペースが無くなりつつあるということだ。

とくに東電の福島第二では、この使用済み核燃料の貯蔵スペースが後二年分程度しかない。日本の原発トータルで見ても、今のままならばあと七、八年で貯蔵スペースがなくなる。

そこで、2010年をめどに、青のむつに、中間集中貯蔵施設を造ることになっている。ところが、これはあくまでも中間貯蔵であって最終的な処分では無いということになっている。そのために、六ヶ所村の再処理工場を稼働させることにより、中間貯蔵しているものも再処理してよそへ持っていきますということで、むつの施設を認めてもらっている。だから電力会社は、六ヶ所村の再処理工場を稼働させないと原発の稼働が止まってしまうので、あせっている。

しかし、再処理工場などにかかるコストを誰が負担するのかということが明確に合意されない限り、この費用は電力会社の経営の命取りになりかねない。

原子力発電所はいいことだけではない。使用済み核燃料という核のゴミがどんどん出てきているのだ。

これを処理する方法は二つある。ひとつは、ウランを燃やした時に出てくる使用済み核燃料、つまり今、原発からでている核のゴミをそのまま処分する方法。

もう一つは、再処理をしてプルトニウムを取り出す方法。再処理をしてプルトニウムを取り出すと、使用済み核燃料は高レベル放射性廃棄物と呼ばれるタチの悪いゴミに代わる。再処理をするとTRU(トランスウラニウム)と呼ばれるコバルトやストロンチウムよりも毒性が強くしかも半減期が何万年、何十万年と非常に長い物質が出てくるのだ。

再処理を推進しようとする経産省などは、再処理をすると処分しなければならない量が減るから(1トンの使用済み核燃料を再処理すると0.7トンの高レベル放射性廃棄物になる)、処分しやすいと主張する。これは大きな間違いだと思う。なぜならば処分すべき核のゴミは三割減るかもしれないが、TRUを作り出してしまえばTRUそのものの量の何倍もの体積のTRUに汚染された廃棄物が生まれる。処分の難しさは重さではなく体積で決まる。だから重さは三割減っても、処分すべき体積は何倍にもふくれあがる。

経産省の見積もりではTRUの処理に8100億円かかる。この見積もりは甘いと僕は思う。再処理工場本体の見積もりが三倍以上にふくれあがったように、このTRUの処理コストも何倍にもなると僕は考えている。

そして、この高レベル放射性廃棄物の最終処理場所は決まっていない。(六ヶ所村でたしか40年間の中間貯蔵をすることになっているが、その後どうするかは未定である。経産省はその後、数百年間にわたり、地層処分、つまり地中深く穴を掘って埋めると主張している。問題はどこに、ということだ。)

いずれにせよ、今のずさんな見積もりと国民に対する説明責任もあいまいなまま、再処理工場を稼働させ、再処理をして燃やし方も決まらない大量のプルトニウムを取り出して、高レベル放射性廃棄物を最終処分するか、再処理を当面凍結し、使用済み核燃料の中間貯蔵期間を伸ばす方策を考え、その間に再処理が必要なのかどうかを検討し、コストを精査して、国民的な議論をきっちりとやるかの分かれ道に立っている。

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