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官から民へ
 
 

 高齢化で社会保障費が増え続け、少子化で年金財政が悪化し、国の借金は1000兆円にもなろうとしていることはあなたもよくご存じだと思います。このままいけばいつかゼロ金利が解除され、金利が上がり、そうすれば国債の金利もあがって国の借金の利息が莫大に増え、財政はやっていけなくなります。

 と、いうことは、やはり増税はやむを得ないのでしょうか。

 結論から言えば、増税は必要かもしれません。しかし、税金を上げる前に、政府の予算の無駄をとことん削ることが必要です。乾いたタオルをなお絞ってきた民間企業と比べて、政府や自治体は、まだびしょぬれです。「官」から「民」へ、「中央」から「地方」へ、歯を食いしばって改革を断行しなければなりません。

 中央官庁や地方自治体がやっていることで、官がやる必要のないものがたくさんあります。官庁と自治体が現在やっている全ての業務をチェックして、本当に官がやらなければならないものかどうか厳しく確認しなければなりません。業務の見直しを実行した自治体の例を見ても、本当に必要な業務は現在の六割から七割だと言われています。思い切って止めるトップ(つまり大臣や首長)の決断が必要です。

 官がやってきたものを止めようとすれば、非常に強い政治的な摩擦が発生することは、郵政民営化に対する一部の政治家の強い抵抗を見ても明らかです。道路公団民営化や特殊法人改革でも強い反対がありました。しかし、改革で妥協すればコストは下がらず、将来の増税につながります。

なぜ、保育園を厚生省が、幼稚園を文部省が、それぞれ別々に管轄しなければならないのでしょうか。少子化対策というかけ声とは裏腹に、権限を守りたい役所の理屈とそれにぶら下がる与野党の族議員がこうした無駄を作り出します。一つの役所にまとめる、いや、その前に国が幼稚園や保育園の基準を全国一律に決める必要があるでしょうか。

 国から地方に出ている補助金は基本的に要りません。国が基準を決めて地方に補助金とセットで押しつければ、絶対に無駄が発生します。権限を残したい役所と補助金分配に口を挟みたい政治家の思惑のためにコストが増えていきます。長野県のある村では、国から補助金をもらって国の基準で道路を造ればコストが十倍になるからと、その村で必要な基準で道路を造り、大幅にコストを削減しました。補助金と国の基準・規制を廃止し、地方へ税源と権限を委譲し、その地域にあった政策を実施しなければなりません。

 本当に第二東名高速道路は必要ですか。そりゃ、あったら便利かもしれません。でも、あったら便利だぐらいのものを造るのに莫大なコストがかかるのだったら、造らずに税金を安くしませんか。

 文部省とその族議員たちが、補助金廃止の原則に反し、義務教育の人件費を握り続けようと画策しています。とんでもありません。教育に関しては、人件費だけでなく、文部省の権限も地域に委譲し、地域ごとに教育のあり方を考え、切磋琢磨していくべきです。 福祉や介護の分野でも、国が一律の基準を決めるより、地域がそれぞれの事情にあったルールをつくるほうがより安いコストで、より良いサービスを提供することができます。つまり住民に近いところで物事を決めることができればコストは下がり、サービスは必要に応じたものになるのです。補助金を残すために役人はいろいろと理屈をこねます。そりゃ一理あるかもしれません。でも、そのために税金を上げますか。つまり、そういうことなんです。

 なぜ、住宅公庫は安い金利で貸し出しができたのでしょうか。税金を使って金利を下げていたのです。住宅を建てない人が納めた税金も使って、住宅を建てる人の金利を下げていたのです。今や住宅公庫は撤退し、民間の金融機関が充分に低金利の住宅ローンを提供しています。一部の人しか恩恵を受けることができない政府系金融機関は、これからの日本に本当に必要なのでしょうか。政府系金融機関を廃止し、民間の金融機関に市場を開放するべきです。

 「公」イコール「官」ではありません。公のことはなんでもかんでも官がやる必要はありません。もっと公のために時間を使い、汗を流してくれる「民」の力、つまりNPO法人や町内会やボランティアグループ、つまりもっと言えばあなた自身の力を引き出す必要があります。地域の中で何か問題があったらすぐに「お上」をあてにするのはやめましょう。「お上」が動けばコストがかかり、それは税金にはね返ります。「お上」をあてにする前に、自分たちで時間を使い、知恵を出し、汗を流して問題を解決できれば税金は上がりません。

  納税者は、所得に応じて一人ひとり定められた金額を「公」のために支払わなければなりません。しかし、それを全て所得税として税務署に納める必要はないはずです。自分が支持するNPO法人や福祉団体、学校や美術館や文化遺産のために寄付をすれば、その金額を所得税・住民税から控除する制度を大幅に拡充しなければなりません。そうです、「官」も他の「公」の団体とあなたが納めるお金をめぐって競争するべきです。

未納問題を解決することができない国民年金は、現行制度を廃止し、消費税方式に移行するべきだと思います。消費税を全額年金に充てることにすれば、現行の国民年金額を維持するためには当面、消費税八%が必要です。何のために使われるのかわからない増税よりも、使い道がはっきりし、納得できる増税を選ぶべきです。

「社会的弱者」の再定義も必要です。例えば六十五歳を超えていても、サラリーマンの平均給与以上の収入があったり、一定金額以上の金融資産がある人には国が国民年金を払う必要はないはずです。

 増税を議論する前に、議論が必要なことはたくさんあります。ただし、その議論をする時には、過去はどうだったかという議論ではなく将来どうするのかという議論をすること、思い切って改革をするのだという決意を持つこと、改革ができなければ「官」にコスト、つまり税金を払ってやらせることになるという現実を忘れないことが必要です。

 なんでもお上にやってもらう前に、「それにいくらかかるのか」、「もっと安くする方法はないのか」と民間ではあたりまえの問いかけをすることが必要です。

(ごまめの歯ぎしり第二十六号)

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