「嘉手納統合案」について
普天間代替施設については、日米政府間の再編協議において、現在、「辺野古縮小埋め立て」案、「辺野古演習場」案、「辺野古兵舎区域」案で検討が進められている。このうち、「辺野古縮小埋め立て」ないし「辺野古兵舎区域」案であれば地元も受け入れ容認の姿勢を示しているところであり、海上保安庁による作業警備を実施すれば建設は可能と思われる。ただし、あくまで県外移設を主張する沖縄県側の抵抗や環境問題などを理由とする反対運動の高まりなどから、上記の案が実行困難に陥る可能性なしとせず、万一に備えて代案を検討する観点から、(SACO協議の初期段階で検討され斥けられた経緯はあるが)「嘉手納統合案」について改めて論点を整理する。
嘉手納統合案には、嘉手納基地北部の弾薬庫地区未使用部分を利用するなど複数のアイディアがあるが、ここでは最も現実性の高い「既存滑走路の南側にあるゴルフ・コースなどを潰してヘリパッドを新設する」案を検討する。
前提条件:
- 米海兵隊・普天間基地を一日も早く閉鎖すること
- 普天間移設が、新たな施設・区域の増加につながらないこと
- 普天間移設が、米軍基地の整理統合の促進につながること
- 移設に伴う基地再編が、抑止力の低下を招来しないこと
- 海兵隊の駐留兵力の削減を伴うこと(※もとより当該移設とは直接関係ないが、兵力削減が沖縄県トータルとして負担軽減に直結し、移設先自治体に対する説得を補強することは明らか)
「嘉手納統合」案のメリット:
- 確実に米軍基地の整理統合を促進でき、沖縄県全体の負担軽減に直結する。
- 経費は、(海上施設に比べ)はるかに安上がり。
- 工期は、環境アセスメントなどの必要もなく、(海上施設に比べ)大幅に短縮できる。
- (山を削ったり、海を埋め立てたりする必要がないので)環境問題や希少生物などに与える影響はほとんどない。
- SACO協議において、吉元副知事(太田前県政時代)が提唱した経緯があり、沖縄県の立場からも現実的な選択肢の一つと考えられる。
- 米軍基地の空軍、海軍、海兵隊による統合運用は、ラムズフェルド米国防長官が推進する「米四軍統合の推進」という方針に合致する。
- 米海兵隊としても、(名護に比べ)居住地からの通勤時間を大幅に短縮でき利便性が高い。
克服すべき問題点(および対応策):
- 固定翼機と回転翼機(ヘリ)との共同使用は、トラフィックの密度が増大した場合に運用上の混乱を招く。<<<反論:ハワイのカネオヘ基地ではヘリと固定翼機の共同使用が行われている。また、有事における来援部隊受け入れのための飛行場は別途考える(例えば、下地島飛行場、航空自衛隊鹿屋基地、那覇空港など)。
- 近接する嘉手納町・北谷町市街地における騒音対策が必要。<<<対策:防音壁の構築で相当程度解消される。
- 外来機を含む固定翼機による騒音被害が増大している現状での「新たな基地負担」に対する地元自治体の抵抗は厳しいものがある。<<<対策:外来機の離発着を県外・国外に分散することにより、嘉手納基地における離発着回数を総体として削減することができれば、十分に交渉の余地がある。(「全体として飛行回数(つまり騒音被害)が削減されれば、兵力の構成要素(つまり、空軍か海兵隊か)は問わない」との地元関係者の非公式コメントは参考になる。)
- 1996年時のような米空軍の抵抗が予想される。<<<反論:米軍トランスフォーメーションの中核理念である「米四軍の統合運用」の流れの中で、米空軍には再考を促すべき。
結論:
いずれにしても、「嘉手納統合案」は、1995−96年のSACO協議の際に一度検討されて放棄された案である以上、これを改めて提案する際には説得力のある理由を明示する必要がある。
であるとしても、上で検討したように、「嘉手納統合案」がキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)地区への移設が難航した場合の現実的かつ有力な選択肢の一つである事実は揺るがない。
しかも、朝鮮半島情勢次第で、米海兵隊の実戦部隊が沖縄に駐留し続ける根拠は、今後低下することはあっても増大することはないであろう。もちろん、常時駐留しない場合でも、沖縄における海兵隊の訓練は継続し得るし、有事来援に備えて事前集積施設(船)を整備し、来援部隊・航空機を受け入れる施設を(日米防衛協力のガイドラインにしたがって)予め確保するなど適切な代替措置を講ずるべきである。
また、日米同盟のトランスフォーメーションが深化し、日米における軍事的な役割分担の進展を視野に入れれば、海兵隊のヘリ部隊が嘉手納に共存する期間は超長期たりえない。
要は、沖縄県民に対して、基地の整理統合プロセスを明らかにするような現実的かつ着実な「米軍基地整理統合に関するアクション・プラン」を策定することが早急に求められる。その柱は、人口の3分の2が集中する沖縄県の嘉手納以南における米軍基地機能を一掃し、(中北部への交通網を整備するなどの振興策と引き換えに)米軍基地の自衛隊との共用を進めつつ(これにより、米軍専用基地の75%が沖縄に集中する現状を打開できる)、米軍基地機能を沖縄県中北部へ集約することである。その後、長期的なスパンで海兵隊が撤退していくことによって、中北部に集約された米軍基地機能の大半は沖縄県に返還されることとなるであろう。 |