縦割りの弊害

2017.05.31

平成28年5月、安倍首相は日本の中東地域安定化のための包括的支援の一環として、シリア危機により就学機会を奪われたシリアの若者を5年間で最大150人、日本の大学等で受け入れることを表明しました。

文科省の国費留学生として年間10人、5年間、そしてJICAの技術協力を活用して年間20人を5年間、受け入れることでスタートしました。

将来のシリアの復興を担う人材を育成するという崇高な理念の下、具体的な取り組みが始まりました。

シリアからの文科省の国費留学生の受け入れは、それ以前にも平成23、24年に6名ずつ行われ、25,26年はアラブの春やシリア内戦で在シリア大使館が退避したため募集を停止しました。

しかし、その後、近隣諸国においてシリア国籍の学生の募集が再開され、27年度は5名、28年度3名、そして29年度は総理の方針に基づき9名(1名辞退のため)が選考されました。

文科省の国費留学生は、在外公館が募集を積極的に行い、英語又は日本語で選考試験が行われ、歴史ある制度にふさわしい人材の選抜ができたと文科省は発表しています。

他方、JICAが行う選抜試験では、シリアの近隣諸国でUNHCRがシリア難民と認定した若者が対象となります。

JICAの募集に応じた応募者に対して、TOEFLと高校卒業並みの数学の試験が行われましたが、結果は散々でした。

英語で大学院の授業を受けられるレベルのTOEFLのスコアを取ったものはわずか数人しかおらず、数学でも0点あるいは一桁のスコアを取った者が続出しました。

大学院で英語の授業についていけるレベルの候補者が数人しかいない状況です。

最大で150人のシリアの若者を受け入れますという政府の方針をとても実現できません。

方針を発表するときにはとても良い方針だとみんなが納得してくれても、現実にそれを遂行できないということは、少なからずあります。

今回も、国費留学生の募集ではそれなりの人材を集めているのに、JICAの募集ではうまくいきませんでした。

一つには、これまでの歴史がある国費留学生の募集と比べて、JICAの募集ではうまく宣伝ができなかったのかもしれません。

それならば、在外公館が活発に活動する国費留学生の募集と一本化してしまうのがよいかもしれません。

国費留学生枠は、シリア国籍だけを要件としているので、難民認定されているかどうかは条件にしていませんでした。

国費留学生枠で10人を選抜した後、難民認定されている者から20人選抜するというやり方もあると思います。

あるいは、シリアの復興を担う人材を育成するならば、シリア国籍を要件として、難民認定を求めないということも考えられます。

文科省は文科省、JICAはJICAと別々に募集するのではなく、日本政府としてどういうやり方が一番良いのか、省庁の壁を超えて、実施すべきです。

自民党の行革推進本部は、政策や方針そのものが良いかどうかだけでなく実際にそれがきちんと遂行されているのかもチェックしていきます。



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