オリンピックのコスト

2016.10.17

オリンピックのコストがメディアを賑わせ始めています。

1984年のロサンゼルスオリンピックのコストが790億円だったのに対して、近年のオリンピックはハイパーインフレ気味です。

2004年のアテネが1兆1100億円、2008年北京が3兆4000億円、2012年のロンドンが3兆1700億円。

コストが上振れする問題はIOCの求める立候補ファイルにも原因があるようです。

立候補ファイルはIOCの質問に答える形で作成されますが、そもそもIOCの質問が費用の合計額を尋ねていないので、立候補ファイルの費用合計と実際の費用の間には必ず大きな乖離が出ます。

例えばロンドン五輪では、立候補ファイルでは7500億円のコストが見積もられていました。

実際にはそれが2兆1000億円に膨れ上がるとともに、そもそも立候補ファイルに含まれない用地取得費と鉄道整備費などを合計すると前出の3兆1700億円、あるいは一説によれば3兆4000億円になりました。

自民党の行革推進本部では、オリンピック関連の国費のヒアリングを始めています。

既に合意されている東京オリンピックに関する費用負担の考え方はかなりはっきりしていて、国立競技場を除く恒久施設は東京都、仮設施設は組織委員会です。

組織委員会に対する国費の投入はなく、組織委員会や東京都に対する政府保証も、東京都が財政破綻した場合に限られています。

国の負担が発生するのは新しい国立競技場の建設です。

新国立競技場の設計費40億円、工事費1490億円に加え、周辺整備の50億円、合計で1581億円。

消費税が8%から10%に上がる分および公共事業の賃金、資材価格などの急激な変化による国交省の判断によるスライドが生じたときを除き、この1581億円は変わりません。

新しい国立競技場に関しては国:toto:東京都が2:1:1の割合で負担します。

また、もしオリンピックのボートやカヌーが宮城県で開催される場合の施設整備費は東京都が負担します。

この他、ナショナルトレセンの拡充に関しては、2020年度までに総額で220億円を国費でみることになります。この他に毎年のトレセンの運営経費は国の負担です。

選手の強化費に関しては、2016年度に90億円。今後、2020年度まで国費をいくら投入するのか、その合計金額をきちんと出していきたいと思います。それを超える分は当然に、各競技団体の創意工夫、努力次第になります。

国の負担はインフラ関係でも発生します。

オリンピックの玄関口にもなる羽田空港の機能強化のために総事業費400億円が国費で投入されます。

道路関係は、東京都の環状2号線が2020年度の開通を目指していますが、総工費1156億円のうち国費が635億円入ります。

2020年度に一部開通予定の国道14号線にも250億円の国費が投入される予定です。

また、鉄道の駅やバスターミナル、船舶・航空旅客ターミナル等のバリフリー化にも国費の補助が入ります。

もちろん大幅に増えるであろう外国からの観光客の対応をするための入管や税関、検疫の費用は国費です。

この他にオリンピック関係の経費で大きなものとしては、警備関係の予算があります。

オリンピック関連施設内の警備は組織委員会の費用ですが、施設の周りなど警察等が警備しなければならないコストはかなり大きくなります。

伊勢志摩サミットで305億円の国費がかかりましたが、閉鎖された空間でイベント自体は数日間で終わる警備と夏の間続き、しかも大勢に現場に来ていただく警備ではコストが大きく変わります。

警察庁で試算中です。

さらに選手、コーチや大会関係者の輸送が問題になります。

どうも輸送に関しては、費用が立候補ファイルの中で見積もられていないようです。

輸送についてはどう対応するか、まだ検討中ですが、大会に関する輸送業務そのものは組織委員会が行います。

環状2号線など必要な道路の整備、乗客誘導の施設整備、多言語表記などは東京都が行います。

しかし、道路の交通規制などは警察が行わなければならず、それに関連して国費の投入が必要な部分が出てきます。

一部にはオリンピックだから必要な金は使えと主張する向きもあるようです。しかし、それは時代錯誤と言わねばなりません。

東京都には組織委員会を含めたコストをきちんと検証し、必要ならば計画を変更してでも大胆にコスト削減をしてもらった方が良いと思います。

IOCに対しても、きちんと主張すべきは主張しなければなりません。

莫大な開催コストを考えると、このままでは早晩、オリンピックを開催できるところは限られてきてしまいます。

クーベルタン男爵の理念の中にはオリンピックを派手に開催するとか、IOCの委員に贅沢をさせるなどということは入っていなかったはずです。

東京オリンピックからオリンピックが正常化された、と将来言われるような開催にしなければなりません。



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