退職給付債務割引率

2015.09.03

自民党の行革本部に、東芝の退職給付金割引率が高すぎるし、第三者委員会がそのことに触れていないという指摘があった。

退職給付に関する会計基準の適用指針には「退職給付債務等の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定するが、この安全性の高い債券の利回りには、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りが含まれる。

優良社債には、例えば、複数の格付け機関による直近の格付けがダブルA格相当以上を得ている社債が含まれる。」とある。

国際的な企業の場合、外国の債権の金利などが影響する可能性があるので、一概にどうだとはとは言えないというが..。

金融庁と事業年度ごとの東芝及び日立、NEC、富士通の退職給付金割引率を調べてみると

東芝 日立 NEC 富士通
2006 2.5% 2.5% 2.5% 2.5%
2007 2.8% 2.5% 2.5% 2.5%
2008 3.3% 2.6% 2.5% 2.5%
2009 2.7% 2.5% 2.5% 2.5%
2010 2.6% 2.4% 2.5% 2.5%
2011 2.2% 2.1% 2.5% 2.5%
2012 2.1% 1.6% 1.4% 1.7%
2013 1.8% 1.2% 1.4% 1.7%
となった。

たしかに東芝の2008年の割引率が高い。

調べると、公認会計士の細野祐二氏が雑誌『世界』の九月号で、この問題を指摘している。ちょっと長いが引用してみる。

「(東芝では)09年3月期末以前の早い段階で、この決算では5000億円を超える株主帰属包括損失の計上が避けられないという報告が経理部門より上がっている。...

一方、5000億円の損失計上の結果、東芝は連結決算上で資本欠損になる。資本欠損になると、監査法人が繰延税金資産4000億円強の計上についてぐずぐず言うかもしれない...

こうして東芝は、09年3月決算において、借入金以外では最大の負債項目である退職給付債務に手を付けることにしたのではないか?

東芝の連結貸借対照表には、09年3月期末現在、7193億円の退職給付債務が計上されている。この退職給付債務は、予測給付債務1兆3808億円から年金資産6607億円を控除し、その他会計上の数理差異等を調整して計上されたものである。

要は従業員に対する将来の退職給付債務が1兆3808億円あるものの、退職給付の支払いのために年金資産を6607億円積立ててあるので、その差額の7201億円が東芝負担額となるところ、数理差異等の調整を行って7193億円を負債計上したということである。

年金資産6607億円は、年金資産として運用している株式や債券を時価評価したもので動かし難いのに対して、予測給付債務1兆3808億円の方は、従業員の将来の退職給付債務を昇給率や脱退率等の様々な仮定により数理計算上推定計算し、それを現在価値に割り引いた仮定的理論値に過ぎない。

したがって、仮定値の置き方によって数字は大きく変動することになるが、その中でも決定的に影響力が大きいのは割引率である..

割引率が変われば数理差異等も変わってくるので正確な数字を出すことはできないが、それでも、東芝が09年3月期決算において、割引率を07年以前の許容できるものを適用していれば、東芝が負債計上すべき退職給付債務は7193億円ではなく、あと2331億円多い9524億円となっていた。

この負債が計上されれば、資本欠損額は1228億円から3559億円へ膨張し、それだけ大きな資本欠損となれば、さすがの新日本監査法人も繰延税金資産4939億円の計上など認めないので、そうすると資本欠損額はさらに8498億円へと膨らんでいた。」

こうなると行革推進本部の業務ではないので、こうした情報をまとめて金融庁と証券取引等監視委員会に委ねた。



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