財政再建のための自民党行革推進本部提言

2015.05.27

財政再建に向けて自民党の行政改革推進本部として出した提言です。

2020年度PB黒字化に向けて(第2次提言)

2015年5月
自民党・行政改革推進本部
中長期財政見通し検討委員会

行革本部では、党内の「財政再建に関する特命委員会」からの依頼に基づき、「中長期の経済財政に関する試算(以下、中長期試算)」(2月・内閣府)の検証を行い、その結果を「中長期試算の検証に関する報告と今後の課題」(以下、第1次提言)として、同特命委員会に4月2日に報告した。

そして、この第1次提言を受けて、同特命委員会より、改めて、第1次提言を踏まえた財政健全化の具体策について検討するよう依頼を受けたところである。

このため、第1次提言で検証の主たる対象とした「経済再生ケース」における▲9.4兆円の国・地方PB赤字について、その解消のための歳出改革の具体的方策を検討したので、以下その結果を報告する。

1.第1次提言の概要
先ず、始めに、第1次提言の概要について、以下のとおり確認しておきたい。

2017年4月の消費税引上げを控え、歳出削減を中心とした議論が重要。

国・地方の重複等を除いたPB対象経費の2015年度から2020年度の純増額は15兆円であり、この15兆円が9.4兆円のPB改善を図る際の対象。

歳出改革にあたっては、A.社会保障、B.その他歳出、C.特別会計・独立行政法人等、D.地方財政、の4分野での取組が必要。

社会保障については、先ずは、イ)消費税引上げに伴う充実分等、及びロ)高齢化に伴う増加分を除いた増加部分(3.9兆円)を検討対象とすべき。

その他歳出については純増を前提とせず、また特会・独法等も対象とすべき。

そうした取組の結果、9.4兆円のPB赤字削減は不可能ではない。(その場合でも、5.6兆円の歳出の増加を確保)

債務残高対GDP比の着実な引下げにもしっかりと目配りをするべき。

なお、骨太2006と今回の経済成長ケースを比較した場合、5年間の対象期間中の国・地方のPB対象経費増加額は概ね同規模である一方、要対応額は、今回が9.4兆円に対し、骨太2006は16.5兆円であり、今回の方が余力がある。しかし、経済成長が実現できない場合は、骨太2006を上回る対応が必要となる。

また、安倍政権の過去3年間の予算編成における歳出改革の取組をPB対GDP比で評価すれば、3年間で1%強(0.3%台/年)と試算される。9.4兆円のPB赤字は、対GDP比で▲1.6%であり、今後5年間の取組で9.4兆円のPB赤字削減が不可能でないことはこうした点からも明らかである。

2.社会保障費の増加を高齢化の範囲内に
(1)第1次提言においても指摘したとおり、近年の国の一般会計PB対象経費の増加の大宗は社会保障関係費であり、社会保障の効率化は避けて通れない。

その際、第1次提言では、社会保障の増加を、A.消費税引上げに伴う充実分等、B.高齢化に伴う増加分(高齢者増加等の人口構成の変化の効果)、C.その他の要因による増加分の3つの要因に分解した上で、A.消費税引上げに伴う充実分等については手をつけない前提で、先ずはC.その他の要因による増加分を当面の効率化対象部分とすべき、言い換えれば、「高齢化分を上回る増加を効率化対象とする」ことを提言したところである。

(2)この点、国の一般会計については、行革本部の試算では、社会保障の充実等の経費を除けば、2015年度~2020年度で毎年度約0.8兆円、累計約4兆円増加する姿が描かれている。

他方、安倍政権下の3年間の社会保障関係費の増加は、経済雇用情勢の改善や制度改革等に取り組んだ効果もあり、消費税率引上げに伴う充実分等を除き、毎年度0.5兆円程度に抑制され、概ね高齢化分の増加に相当する伸びに留まっている。

こうした安倍政権のこれまでの歳出改革努力を、今後も継続・強化させていくことが必須であり、その際、A.負担能力に応じた公平な負担、B.困っている人への重点的な公助、C.サービス水準を維持しつつ効率化を図る取組といった改革の視点が重要である。

(3)具体的には、年金においては、マクロ経済スライドなど今後の改革の枠組みが法定化されている一方で、受給時の公的年金等控除について、現役世代の給与所得控除を上回る金額であることや、既往の年金保険料は拠出時に社会保険料控除として控除されている点等を踏まえ、その水準の是正に取り組むべきである。また、負担能力に応じた公平な負担という観点から、高所得の高齢者について、基礎年金国庫負担相当分の年金給付を縮減・停止することもあわせて取り組むべきである。

(4)医療においては、その他の要因による増加分、すなわち高齢化を超える増加分を抑制していくことは、公的保険でカバーする世代別の一人当たり医療費を維持しつつ、歳出改革を行うことを意味しており、以下のような点に取り組むべきである。

ジェネリック医薬品の原則義務付け、外来時の定額負担導入、市販類似薬の保険からの除外など公的保険給付範囲の抜本的見直し、
薬価を含めた単価の適正化、医療従事者の待遇の適正化

病床及び高額医療機器の提供体制の改革(長期入院医療費と外来医療費の地域差を解消する仕組み作り)

年齢や就業先ではなく、負担能力に応じた負担(高齢者を優遇した高額療養費制度の見直しや後期高齢者の窓口負担の引上げ、マイナンバーを活用して金融資産を考慮して負担を求める制度の構築)

保険者機能の強化(医療費の地域差が住民の保険料に反映される仕組みの構築、レセプト情報の積極的活用等)

生活習慣病対策の徹底等、予防医療の推進

ICTやマイナンバーを利用した重複受診・検査等の抑制

終末期医療の在り方の検討

(5)介護についても、医療同様に、すなわち高齢化分を超える増加を抑制していくことは、公的保険でカバーする世代別の一人当たり介護費を維持しつつ、歳出改革を行うことを意味しており、以下のような点に取り組むべきである。

軽度者に対する生活援助等の保険給付率の引下げ、軽度者に対する通所介護などを自治体が予算の範囲内で行う仕組みに移行させることなど、公的保険給付範囲の見直し

要介護認定の精度向上のため要介護認定率の違いが地域の保険料に反映される仕組みの構築

報酬単価の適正化、自己負担の公平化(自己負担上限額見直しや2割負担の対象者の拡大、マイナンバーを活用し金融資産を考慮して負担を求める制度の構築)

介護保険者(市町村)が中心となった介護予防の推進

(6)さらに、年金・医療・介護を除く「その他の社会保障」についても、個別分野毎に効率化を進めその増分の抑制に取り組むべきである。

具体的には、外国人に対する生活保護の適用ルールの厳格化、生活扶助保護を受けている若年層の就労を通じた扶助脱却の促進、医療扶助の更なる適正化のほか、生活扶助基準のあるべき水準の再整理に取り組むべきである。また、労働保険特会の雇用勘定に約6兆円の積立金があることを踏まえ、雇用保険の国庫負担を当面停止し、雇用情勢改善の果実を還元すべきである。

3.純増を前提とせず人口減少社会に対応した歳出改革を
(1)社会保障以外の歳出には、公共事業費や文教費、防衛費などが含まれ、行革本部の試算では、7.2兆円の増加となっている。このうち、国(一般会計)については、地方(普通会計)と重複する地方交付税等や消費税率引上げに伴う影響分を除けば、2015年度~2020年度で毎年度約0.5兆円、累計2.4兆円増加する姿が描かれている。

しかし、実際には、第1次提言で示したように、一般会計PB対象経費のリーマン・ショック後の増加要因は社会保障関係費の増加に求めることができ、社会保障以外の歳出は横ばいである。安倍政権下の3年間の予算編成で見ても、外交予算の充実、防衛力の着実な整備、地方創生など、メリハリある予算配分を実現しつつも、社会保障以外の歳出はほぼ横ばいにとどまっている。

(2)こうした予算編成の実績や今後の人口減少社会における公共サービスの見込みも踏まえれば、第1次提言で指摘したとおり、社会保障以外の歳出について、中長期試算のように純増を前提とする必要はないことは明らかである。

一人当たりのサービス水準は維持しつつも、人口減少の影響等を反映させ、最大限抑制する必要がある。その際、民間活力の最大限の導入、官民格差の是正、中長期的歳出枠組みなどを徹底する必要がある。

(3)具体的な取組としては、今後の社会資本整備について、その整備水準の向上や今後の急速な人口減少を踏まえ、一層重点化を図るとともに、民間活力・民間資金や新たな技術の導入等による一層の効率化を進めることが必要である。

ODA予算に関しても、わが国の一人当たりGDPが諸外国と比べて相対的に小さくなっていること、わが国の人口が減少していることに鑑み、規模の縮小が必要である。

少子化が進むなかで、教育予算がそれをきちんと反映したものになっているか、18歳人口が減少してきた中で大学教育にかかる予算がきちんと削減されてこなかったことについても検証が必要である。

また、長く続いたデフレ経済のもとで民間給与が引き下げられてきたことに比べ、国及び地方の公務員人件費はその抑制が十分でないことから、今後、経済の好循環に伴い民間賃金の上昇が見込まれるなかにあっても、給与制度の総合的見直しや定員の合理化等の取組を進めることにより、増加を抑制していく必要がある。

更に、今国会において成立した防衛装備品の調達に関する長期契約法を含め、市場化テスト、PFIなど長期契約を可能とする枠組みも活用し、国・地方の契約・公共調達等について、長期的視点によるコスト削減を可能とする取組も必要である。

そして、行政の効率化を図る観点から、政府においては、ITの効率的利用の更なる推進・総務事務の効率化を図るべきである。総務事務については、自治体の総務事務センターの取組に倣って、少なくとも現在各局等で管理している総務事務等を集約化すべきである。また、自治体の業務の標準化・システム統合も推進すべきである(既に、神奈川の町村では自治体間のシステム統合により経費削減が実現)。

4.国と同様の地方財政改革を
(1)中長期試算での2020年度のPB▲9.4兆円のうち、地方(普通会計)は+4.8兆円の見込みである。しかし、この地方(普通会計)のPB黒字は国からの財政移転の上に成り立っており、国・地方を通じた財政構造を俯瞰することが重要である。

そうした中、中長期試算における地方(普通会計)のPB対象経費は、行革本部の試算では、国と重複する国庫支出金に見合う歳出や消費税引上げに伴う社会保障の充実等の経費を除けば、2015年度~2020年度、国を上回る約8兆円規模で増加することとなっている。

国を上回って歳出が増加する姿を含め、地方財政については、第1次提言で指摘したとおり、国の取組と歩調をあわせた歳出抑制の具体的規律が不可欠である。

(2)ただし、地域の実情に応じて様々な性格の地方単独事業が行われているほか、分野横断的な事業が一体的に行われている事例もある。国(一般会計)と同様に社会保障とそれ以外に単純に切り分けることが困難な面もあり、歳出規律としては地方財政を一括りにしたものを検討することが適切である。

(3)なお、中長期試算上は、地方財政については決算ベースでの推計が行われているが、これまでも、決算ベースと地方財政計画ベースのPBは同一基調で推移している。したがって、決算ベースの地方の歳出は地方財政計画に計上される歳出の抑制、水準の適正化によりコントロール可能であり、近年の地方財政計画における地方一般財源総額など歳出面の現実の推移なども踏まえ、国同様、歳出改革努力を継続・強化させていく必要がある。具体的には、

給与関係費について国の水準・基準を上回る単価や手当の計上は厳に慎むこと。

一般行政経費について、地財計画における計上の内訳・積算を明確化するとともに、決算との乖離の把握を通じた計上の適正化を徹底すること。

リーマン・ショック時の危機対応措置として創設された歳出特別枠や交付税別枠加算については廃止すべきであり、一部が「まち・ひと・しごと創生事業費」等の新たな地方単独事業に振り替えて実質的な存続が図られている点を含め、計上の抜本的な見直しを図ること。

(4)更に、地方財政計画の計上にとどまらず、自治体レベルの実際の歳出を改革することも不可欠である。具体的には、

地方公務員人件費について、国の給与制度の総合的見直しを踏まえた見直しや国家公務員又は民間の水準を踏まえた給与水準の適正化、技能労務(学校用務員、学校給食等)の民間委託の推進。

地方単独事業に関して、社会保障関連のものであってもその増加が高齢化要因によるものでないものがあり、医療・介護分野以外の地方独自の社会保障施策については、第1次提言でも指摘したとおり、今後の人口減を踏まえ、その増分を抑制すべきである。

臨時財政対策債の元利償還金相当額について、公債費として各自治体の基準財政需要額に算入され、交付税が配分されているにもかかわらず、実際には公債費に充てられていない事例が多いことから、各自治体において確実に公債費に充てる仕組み作りが必要。できない場合には、地方財政計画に計上される公債費の減額を行う必要がある。

(5)なお、地方財政においては、地方税収や地方交付税の法定率分では地方歳出を賄えず、一般財源の不足分の半分を国が地方交付税の加算で補填する状態が続いてきた。

中長期試算では、今後、国・地方の税収増等により2018年度(平成30年度)には、こうした状態の解消が見込まれており、今後は、交付税法定率分の減額や国庫補助金等の一般財源化などを通じ、債務残高増加の抑制につなげることも選択肢となり得る。しかしながら、先ずは、地方における歳出の抑制を徹底しつつ、今後の財源超過分について、中長期試算が前提としている通り確実に公債の償還に充て債務残高の純減に寄与させることが優先されるべきであり、そのことを担保する仕組み作りが必要である。また、地方財政計画の歳出水準の適正化が必要である根本的な原因は、地方交付税の財源保障機能が幅広く、曖昧なことにある。歳出の増加抑制にとどまらずより制度的に財源保障の範囲を限定・厳格化していくことや、交付税の機能を財政調整機能に特化させていくといった交付税自体のあり方の見直しも検討すべきである。

5.特別会計・独立行政法人等の改革も
(1)第1次提言では、中長期試算上、一般会計以外の国及び普通会計以外の地方が合せて計5.1兆円のPB赤字であり、特会や独法等の財政健全化も重要な課題と指摘した。

そこで、あらためて直近の2013年度SNA確報値をもとに検証したところ、一般会計以外の国のPB赤字は3.3兆円あり、一般会計と特別会計間の出し入れ等によるもの及びエネルギー特会の特殊要因が大きな影響を与えている。

すなわち、外為特会をはじめとする特別会計から一般会計への繰入れは、一般会計以外のPBが悪化する一方、一般会計PB改善要因となる。同様に、一般会計において金融取引とされる税外収入がある場合、歳入として一般会計PBの改善に寄与するが、SNAベースのPBにはカウントされないため、残差としての一般会計以外のPBでは悪化要因と認識される。いずれも全体としての国PBには影響しない。

エネルギー対策特別会計については、原子力損害賠償支援機構交付国債の償還が約1兆円の赤字要因となっている。東京電力を含む原子力事業者から同機構に納付される一般負担金及び東京電力からの特別負担金により、実質的に回収されなければPBの赤字要因となるため、しっかりとした回収が必要である。

(2)また、言うまでもなく、その他の特会・独法等における財政健全化努力も必要である。例えば、国立大学法人における収入の増加のように、独自財源収入の増加や事業費抑制等を通じて、国の一般会計からの繰入れや運営費交付金の抑制を図っていくことが、国PBの改善に不可欠であり、今後各特会・独法を個別に精査していく必要がある。

また、地方財政についても、普通会計から地方公営企業会計など他会計への繰出金や地方独法等への運営費負担金を抑制し、地方PB全体の改善につなげる必要がある。

なお、こうした個別の精査なく、例えば特会や独法をSNAの対象から外すといった数字合わせの手法は厳に慎む必要があることを付言しておく。

6.その他
なお、歳出改革を通じた9.4兆円のPB赤字解消とは直接の関係はないが、ヒアリング等の検討過程で、行革本部として以下のような点も重要との結論を得た。

(1)民間経済予測機関の活用や独立の推計機関の設置を
近年、海外の主要国では将来推計を財政や社会保障の規律付けのために活用しており、その将来の経済見通しの客観性等を確保することが喫緊の課題となっている。この観点から、民間経済予測機関を活用することや、推計機関の一元化・第三者化(独立化)を通じて、透明性を確保することが重要との指摘がなされている。OECDにおいては、そうした推計機関を設ける場合に考慮することが望ましい点を盛り込んだガイドラインを公表している。

その背景として共通する考え方は、選挙もあり近視眼的、すなわち放漫財政に陥りがちな民主主義を、独立・客観的な推計によって補完することである。翻ってわが国においては多種多様な将来推計が政府内に組織毎、政策毎に混在し、その整合性も取れない状況になっており、その論理的帰結が現在の巨額な政府債務ともいえる。わが国においても、早急に、民間経済予測機関の活用や独立の推計機関の設置を検討すべきである。

(2)保険料と税金の着実な徴収を
財政状況、とりわけ社会保障をめぐる財政状況の厳しさが指摘されるなか、社会保険料の徴収漏れが指摘されている。

この点、マイナンバーを活用し、国税・地方税・年金の各機関が、必要な情報を共有・活用するための情報共有ネットワークを構築することで、「厚生年金の適用漏れの把握・解消」などの取組を効率的に推進できるようにすべきである。また、既に幅広く利用されている民間会計ソフトを有効活用することで、利用者にとっても、国税・地方税・年金の書類提出のワンストップ化を実現し、実質的な保険料と税の徴収機能の一元化を目指すべきである。

(3)収入の適正化・一般財源化を
公の電波を独占することで事業を行っている企業等が負担する電波利用料の適正レベルへの引上げ・一般財源化やtoto等の収入の一般財源化(その上で、適正な金額を電波関連設備、スポーツ等の支出に充当)など、広い意味での政府部門収入の適正化・一般財源化を幅広く実現していくべきである。

(以 上)



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