年金が減るマクロ経済スライド

あなたが会長をしている自治会が、公民館で炊き出しをやることになりました。

大きな釜でご飯を炊いて、おむすびを握ります。

そして自治会のメンバーを全員、年齢順に並んでもらって大きなおむすびを二つずつ配っていきます。

しばらくして、あなたはふと心配になりました。釜の中のご飯が思ったよりもずいぶん早くなくなっていきます。

このままでは行列の最後までおむすびを配ることはできません。

あなたは配るおむすびを一つずつにしようかと思いましたが、行列の最初のほうの人たちがおむすびを二つもらっていたのをみんなが見ています。

そこであなたは配るおむすびの大きさを少しずつ小さくしていこうと思いました。

おむすびを握っている自治会の役員さんたちに、おむすびを少しずつ小さくしてくださいと頼みました。これでお釜のご飯はなんとか行列の最後までもつでしょうか。

このおむすびを小さくするのが「マクロ経済スライド」というやつです。

年金は、本来、インフレに合わせて金額が調整されます。1%のインフレの時に年金の金額を1%増やさないと実質的な購買力は1%小さくなってしまいます。

しかし、来年の4月から、マクロ経済スライドが始まると、こうなりません。

例えば物価上昇率が2%だったとしたら、来年4月の年金の引き上げは2%-(スライド調整率)になります。スライド調整率は当初、0.9%と想定されていましたが、年金再検証の結果引き上げられ、1.3%とされています。

スライド調整率とは、はやくいえば、現役世代の人口減少率と平均余命の伸び率を足したものです。

つまり、物価上昇率が2%なら、そこから1.3%を差し引いた0.7%分、年金が引き上げられます。(*1)

名目の年金額は増えますが、実質的な年金の購買力は1.3%分減ることになります。

こうしたマクロ経済スライドは、最新の年金再検証によれば2043年ごろまで、つまり今後、30年間続くことになります。

「えっ、聞いてないよ」とおっしゃるかもしれませんが、これは2004年、小泉政権の時に決まった政策です。

マクロ経済スライドは、厚生年金、国民年金ともに適用されますが、国民年金のほうが大きく影響を受けることになります。

しかし、この「おむすびを小さくする」ことをやらなければ、行列の後ろのほうまでおむすびを配れないのです。

本来、このマクロ経済スライドはもっと早くから発動されることになっていましたが、実はデフレ経済では発動されないことになっていました。そのため、マクロ経済スライドは仕組みはあっても発動されませんでした。

つまりおむすびが大きすぎることに気がついていてもおむすびを小さくしてこなかったのです。そのため、お釜の中のご飯は、どんどん減ってしまいました。

そこで、デフレでもマクロ経済スライドを発動できるようにしようという議論があります。

その場合は、物価の下落に合わせて年金額が削減されると同時にスライド調整率分がさらに差し引かれることになります。

ただし、そのためには法律の改正が必要です。

さて、このおむすびを小さくしていくことに、あなたは賛成してくださいますか。

(*1)これまでの年金は、物価が下落したにもかかわらず、年金額が引き下げられなかったことがあり、本来支給されるべき年金額よりも2.5%年金額が上回っていました。

ここ2年間、毎年1%ずつこの差が解消されてきましたが、まだ0.5%本来支給されるべき金額を上回っています。

この分は、来年の4月に引き下げられます。

そのため、もし2%の物価上昇率の場合、そのまま物価調整をすれば年金は2%引き上げられるはずですが、まず、この0.5%の解消が行われます。

そしてそこに1.3%のマクロ経済スライドが適用されます。つまり2%の物価上昇率の場合、来年の4月の年金額の引き上げは0.2%ということになります。

その後は、1.3%のマクロ経済スライドだけが適用されることになります。



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