貿易赤字の裏側

2014年上半期の貿易収支は、半期では過去最大の7兆5983億円の赤字になりました。

日経新聞は「燃料輸入の増加が主因」と分析し、産経新聞も「原発の稼働停止に伴う、火力発電用燃料の輸入額が高水準となるなど輸入が過去最大に」と解説しています。天然ガスの輸入量が増えて貿易赤字が増えているというように聞こえます。

この一年間の天然ガスの輸入量を四半期ごとにみてみましょう。

2013  1月- 3月 2349.4万トン
2013  4月- 6月 1991.3万トン
2013  7月- 9月 2124.4万トン

2013 10月-12月 2284.0万トン
2014  1月- 3月 2373.4万トン
2014  4月- 7月? 2052.8万トン

2013年の第2四半期と比べ、2014年の第2四半期の天然ガスの輸入量は3%の増加です。

ところが同じ時期の天然ガスの輸入金額をみてみるとこうなります。

2013  1月- 3月 1兆8300億円
2013  4月- 6月 1兆6713億円
2013  7月- 9月 1兆7055億円
2013 10月-12月 1兆8522億円
2014  1月- 3月 2兆1139億円
2014  4月- 7月? 1兆7928億円

2013年の第2四半期と比べ、2014年の第2四半期の天然ガスの輸入金額は7%も増加しています。

福島第一原発の事故が起きた2011年と比較してみましょう。

年度 輸入量 輸入金額
2011  8318.3万トン?  5兆4044億円
2012  8686.5万トン?  6兆2141億円
2013  8773.1万トン?  7兆3428億円

2013年の輸入量は2011年と比べて5%の増加です。しかし、輸入金額は36%も伸びています。

2011年3月、天然ガスの価格は$12.18でした。当時の為替レートは1ドルが81円79銭だったので円建ての天然ガスの価格は996円25銭になります。それに対して2014年5月の天然ガス価格は$17.75、為替レートは101円79銭。円建ての天然ガス価格は1806円77銭。円建て価格は81%上昇しました。

2014年上期の輸入量、金額を単純に2倍して2011年と比較してみると輸入量は6%の増加、輸入金額は45%増えることになります。

新聞報道を見ていると、あたかも原発が停止したので天然ガスの輸入量が増えて、貿易赤字が膨らんだかのように思えます。しかし、事実は、天然ガス価格の上昇とそれに輪をかけた円安のおかげで円建てのガス価格が上昇し、貿易赤字が増えたのです。どの新聞を読んでも天然ガスの輸入量やその価格がどう推移したのか、まったくわかりません。

原発が停止しているから足元を見られて天然ガスのコストが上昇していると説明する人もいます。しかし、日本に輸入される天然ガスのほとんどは長期契約に基づくもので、価格は原油価格に連動すると定められています。確かにスポット価格で購入された天然ガスもあります。しかし、電力需要が増える夏にスポットで購入された天然ガスは、長期契約された天然ガスよりも安い価格で購入されています。ですから足元を見られて高く天然ガスを買わされているという説明は全く当たっていません。

客観的なデータに基づいて、現実的な議論をしていきたいと思います。



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