国民負担を増やす東電救済は駄目だ

2012.05.26

政府と東京電力は、6月の東電の株主総会で、1兆円を投じて政府が東京電力の株を引き受けるという絵を描いている。

柴山昌彦代議士が、金曜日の自民党の会議で指摘したとおり、これは極めておかしな動きだ。

東京電力は、賠償金の支払いと廃炉費用の負担で、間違いなく債務超過になる。

そのため、経営陣が責任をとって退陣し、株主資本を100%減資し、債権者の債権をカットするという破綻処理が必要だ。これをやることによって、株主資本の減資分と債権カットした分、国民負担を減らすことができる。逆にそれをやらなければ、その分、国民の負担は増える。

株主総会で授権枠を増やし、7月にでも払い込みが終わってしまうと、おいそれとは破綻処理ができない。つまり、政府が1兆円を払い込んでから破綻処理することになれば、その1兆円も紙くずになる。つまり国民負担の1兆円が、紙くずになってしまう。

だから、政府が1兆円を払い込む前に破綻処理をして、その後、新しく政府がお金を入れて東電を100%支配下に置くべきなのだ。

政府が破綻処理をせずに、1兆円を入れると言うことは、その後は株主資本を減資することはない、そして株主資本が減資されない以上、金融機関の債権もカットされないというシグナルを送っていることになる。

つまり、金融機関にお宅の債権は保証するよというための1兆円の投入なのだ。

つまり、野田政権は、金融機関を守って国民に負担を余計に負わせることにしているのだ。

(政権交代が起きたときに、政府分の1兆円も含めて減資をする代わりに、その時点での金融債権をカットするということは理論的にあるかもしれない。1兆円を捨てても債権カットの額が大きければ国民負担は小さくできるかもしれないが、それはさすがにその後の安定性にかけるだろう。)

東電の値上げも同じことだ。消費者がそのまま東電に値上げ料金を支払ったのでは東電だけがいい思いをするだけだ。

まず、値上げが本当に必要なのか、きちんと検証する。どうしても必要だというならば、単なる値上げではなく、東電が持っている送電網を売却させ、その対価として、これまでの電気料金に上乗せをさせてもらうべきだ。

これによって送電網は東電の手を離れ、発送電分離が行われる。最後に、送電会社を上場し、その利益分だけ国民負担が減ることになる。

値上げによって、東電が潤うのではなく、国民が負担した分は、国民の資産になるようにすべきだ。

今回の値上げ計画は、とても承認できるようなものではない。化石燃料の購入は、経産省も合理的ではないと認めている。子会社も119のうち45しか売却をせず、残った子会社に役員達が天下り、随意契約で高い料金を支払い、消費者につけを回している。

プルトニウムの保管料やPNTLに支払った船積み運賃などは一切公開せず、しかし、その分を再処理積立金として消費者に請求している。

しかも東電は、子会社と共同でスペックを決めたTCP/IPも実装しないスマートメーターを入札させようとし、しかも、東電は自前に光ファイバーを設置しようとし...。

さらに配送電部門を社内カンパニー制度にして配送電分離の議論をごまかそうとまでしている。

そして経産省は、東電の利益の9割が家庭部門(規制部門)から捻出されていることを知っていた。自由化が始まったときから経産省は、電力会社にデータを出させていたのだから当然だ。しかも、それを大臣にあげていなかったのだから、大臣がはじめてこの情報が公開されたと勘違いをして、間の抜けた発言をすることになってしまった。

原子力ムラだけでなく電力ムラにもしっかりとメスを入れなければならない。

ただ単に電力料金が上がって、それが東電の懐に入るなどという値上げを許してはならない。



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