韓国の再処理を止めよ

2012.01.24

正月のワシントン訪問で、普天間移設問題やF35の調達のようにまだ前面には出ていないが、底の方で大きなうねりになっていた問題が、韓国の再処理だ。

日本は、核燃料をアメリカから協定に基づいて供給を受けており、アメリカから輸入した核燃料を再処理する場合は、アメリカ政府の合意が必要とされていた。

一九五五年の日米原子力協定では、使用済み核燃料は米国に返還されるものと明示され、日本での再処理は認められていなかった。

一九六八年の日米協定で、初めて日米両国が共同決定した場合に、日本で再処理ができるという条項が盛り込まれた。

そして東海村の再処理施設の運転に関して条約上の共同決定が必要となり、一九七六年から九か月にわたる日米再処理交渉が行われ、一九七七年九月十二日に日米合意が成立した。

当時、カーター政権は、核不拡散政策を強化しつつあり、日米交渉は難航したが、この日米合意は、日本が再処理を行うことを認める一方、日本に対してそれまで以上の義務を課すものではなく、日本の原子力関係者は、再処理を『交渉で勝ち取った権利』と認識するようになった。

日本と同様に、韓国も再処理を始めるためには、米韓原子力協定の改定が必要だ。そして現行の米韓協定が満了する2014年にむけてこの問題はだんだん大きくなっていくだろう。

韓国では、原発施設内での使用済み核燃料の中間貯蔵拡大に対する地方自治体の懸念、北朝鮮の核開発に対する警戒、そして、再処理が日本に対して認められているのにもかかわらず韓国にそれが認められていないことなどから、再処理を始めようという気運が原子力関係者の中で盛り上がっている。

韓国の原子炉の中には、2016年までに使用済み核燃料プールが一杯になるものがある。しかし、自治体の反対で、同じ敷地内の新しい原子炉の使用済み核燃料プールに移したり、ドライキャスクに移したりすることは難しいと、韓国の原子力関係者は主張する。

アメリカ政府は、再処理は経済的合理性がない、放射性廃棄物の処理を複雑にするなどと韓国の再処理に反対の姿勢を見せているが、日本があくまでも再処理にこだわっていることが、韓国の立場をより強硬にしている。

2009年5月の北朝鮮の核実験以降、韓国は"Nuclear Sovereignty"、つまり再処理に対して日本と同じ権利を韓国が持つべきだと主張している。

しかし、日本に続いて韓国にも再処理を認めれば、その次にどこかの国が同じ主張をした時に、アメリカはますますノーと言いにくくなる。そして、すでに南アフリカが再処理に名乗りを上げようとしている。

日本にとって、再処理はもはや前向きな意味を持たない。だから、まず、日本が再処理から撤退し、韓国が新たに再処理を始めることをやめさせるべきだ。

韓国が再処理を始めれば、朝鮮半島で核レースが始まりかねず、北東アジアは一気に不安定化する。また、もし、韓国が再処理を始めれば、現在の核不拡散の体制は崩壊しかねない。

日本国内に、再処理は、日本の抑止力維持のために必要だなどという主張がある。そんなばかげた議論にはまったく与するつもりはない。しかし、プリンストン大学のフォン・ヒッペル教授によれば、アメリカの核弾頭に使われているプルトニウムの総量は、38トンであり、日本が保有するプルトニウムの総量は45トンだ。日本はもう既にアメリカの核弾頭以上のプルトニウムを保有しており、抑止力云々というばかげた議論を展開するにしても、再処理でこれをそれ以上増やす必要は全くない。

韓国が再処理を始めるのを止めるためにも、我が国の原子力政策を転換し、再処理から撤退すべきなのだ。



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