厚生年金の抜本的改革 続き

2012.01.09

厚生年金の抜本改革の続き。

もともと厚生年金は、積立方式として始められた。しかし、本来、積立方式ならば670兆円の積立金がなければならないところ、現在、110兆円しか積立金がない。

1970年代からの年金支給の大盤振る舞いと年金保険料引き上げの先送りが、年金財政を悪化させ、それが修正されないまま現在につながってきた。

現在の年金制度で約束された年金の支払金額は670兆円。それに対して残っている積立金は110兆円。この状況で賦課方式の厚生年金を積立方式の年金制度に切り替えようとするならば、差し引き560兆円を政府が一時的に肩代わりする必要がある。

しかし、この二重の負担総額、560兆円は、今すぐ必要になるものでも、いちどきに必要になるものでもない。
むしろ二重の負担の償却は、できるだけ長い年月をかけて、負担が一つの世代に集中しないようにするべきだ。
年度ごとに必要になる金額は、その年の厚生年金支給額、およそ20兆円。

この20兆円のための財源は、たとえば:

現在の厚生年金の年金保険料は、基礎年金の保険料を含んでいる。
基礎年金を消費税方式に移行すれば、厚生年金保険料に含まれている基礎年金の保険料は必要なくなる。現在の厚生年金の年金保険料に含まれている基礎年金保険料部分の個人負担分は廃止し、企業負担部分を「二重の負担」の財源に充てる。

現在の年金受給者が、年金受給金額に比べて保険料として負担した金額がはるかに少なかったことが、現在の年金問題の原因の一つになっている。
現在の年金受給者が亡くなった時に、年金の過去財源の一部、たとえば受給してきた基礎年金の国庫負担分相当額、を本来の相続税とは別枠として残された資産から徴収する。

現在の賦課方式の厚生年金から積立方式の年金制度に移行すると、現役世代の将来の保険料負担は軽減される。
その軽減される分の一部を二重の負担の解消のために徴収させていただく。

等々が考えられるが、これで不足する分は、年金国債でまかない、二重の負担解消の財源が一つの世代に集中しないようにするべき。

さらに、厚生年金問題を議論する上で、避けて通れないものが厚生年金と共済年金の統合問題だ。

小宮山厚労大臣は2011年11月11日の閣議後の記者会見で、『07年に提出した法案をベースに検討している』と述べている。

2007年に提出された統合法案は、デタラメだ。自公政権が提出したものをベースに新法案を作ればいいと小宮山大臣が考えているならば、それは大きな間違いだ。

厚生年金と共済年金の統合の目的は本来二つあるはずだ。一つは厚生年金と比べて保険料率が低かったり、職域加算という上乗せ部分があるなどの官民格差を統合によってなくすこと、もう一つは厚生年金と比べて優遇されてきた共済年金だから持ち得た積立金を統合すること。

しかし、2007年の厚生年金と共済年金の統合法案は、不完全、不自然なものだった。自民党内の過去官僚が暗躍した結果、明らかにおかしな内容の統合案になっていた。

2007年の法案では、たしかに共済年金の保険料率は、2004年の年金改革が定めた厚生年金の料率引き上げにそって18.3%まで引き上げられて、そこで固定される。しかし、引き上げ部分は共済年金の積立金で支払うことにして、公務員の負担はそう簡単に増やさないという内容の法案になっている。

当時の役所がつくった資料だとこう表現される。
「また、共済組合等が保有する積立金について、厚生年金の積立金の水準に見合った額を仕分け1・2階部分の共通財源に供する。」
何を言っているかよくわからないが、こうした霞ヶ関文学に瞞されてはいけない。

廃止されるはずの職域加算もOB分は積立金から支払うことで温存し、厚生年金を上回る分の共済年金の積立金は使ってしまう。共済年金が厚生年金よりも優遇されてきたことによる共済年金の積立金の過剰分は共済年金で使い切ってから統合しますという内容になっている。

つまり厚生年金の積立金は5年分相当だが、共済年金の積立金は10年分相当ある。しかし、統合する時には厚生年金と同じ5年分だけの積立金をもって統合するから、残りは共済年金で使い切りますということ。

つまり共済年金の積立金52兆円のうち28兆円は差し出すが、残りの24兆円は自分達で使い切るぞという法案だ。

しかし、共済年金の年齢構成が厚生年金よりもいびつになっていることから、将来、共済年金の財政状況は、実は厚生年金よりも悪くなるおそれがあることが指摘されている。

だから統合する時には共済年金の持参する積立金の割合は厚生年金よりも高くなければならないはずなのに、厚生年金と同じ5年分だけを持参して統合することにすれば、将来、厚生年金は統合した共済年金の支払い分を余計に負担しなければならなくなる可能性がある。

共済年金の積立金を大盤振る舞いして使い切って、統合したあとは厚生年金におんぶにだっこというのでは、なんのための統合かわからない。

この統合は、官民格差を無くすことと、賦課方式の年金制度を積立方式に抜本的に改革するために、積立金を少しでも増やすための統合であるはずだ。

2011年8月26日に開催された社会保障審議会年金部会で、厚生年金と共済年金の統合は、調整が必要なため、関係省庁間で検討して年金部会に「報告する」とされている。そして年金部会の議題にこの一元化は含まれていない。

共済年金と厚生年金の統合は役所が勝手に決めて来ますといっているわけだ。

共済年金の統合はこれからの年金の抜本改革に資するために決めたルールに従って、統合させますというのが筋だろう。

2007年当時、民主党は、厚生年金と共済年金の統合は、国民年金も合わせて一元化すべきだという全く違う理由で反対したが、今回、かつて自分達が反対したその法案と同じようなものを出してきてはいけない。政治がきちんと官をコントロールできるかという問題だ。

そして最後に、再三再四指摘してきたことだが、数理計算もやらないで年金の小手先改革をやりますというのはだめだ。

税と社会保障の一体改革をやりますというので、厚労省年金局に、2009年の再検証では予測値を使っていたところを、まず今日までの最新の現実の数字に入れ換えて、年金財政がどうなるのか確認してほしいと要請した。

ところが返ってきた答えは、パラメータを入れ替えて年金財政を計算しようとすると数ヶ月かかるからできません。

そろばんと計算尺で計算する時代でもあるまいし、小宮山大臣だって最新の数字が必要なはずだからやってくれとたのむと、厚労省年金局の数理課長が来て、小宮山大臣にその旨伝えましたが、大臣から、今、そんなことはやらなくていい、最新の人口推計が出てから前提の数字を入れ替えて数字を検証すればいいとの指示でしたと言う。

ちょっと待ってくれ。

政府与党がやってきた税と社会保障の一体改革の年末までにとりまとめは、年金財政がどうなっているのか、数字を見ないで政府与党は議論をしていたのか。

消費税引き上げの結論を出しておいて、あとから年金の最新状況はこうなっておりますという数字が出てくるのか。

野田総理や小宮山大臣は、官僚に言われたとおりにやっているだけなのだろうか。

消費税を上げますという結論ありきの議論なのか。



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