相模半白節成

2011.12.07

相模半白節成(さがみはんじろふしなり)をご存じですか。

今はとても少なくなったキュウリの固定種です。

元々は、華南型といわれる日本で最もふるいタイプの胡瓜で、かつて荏原郡大井村で作られていた「大井胡瓜」を、明治30年から38年頃に馬込の農家が瓜と掛け合わせて品種改良した「馬込半白節成」(色が白っぽく茎の節ごとに実がなることから半白節成)を、昭和4年頃に神奈川県農業試験場二宮園芸部の竹内技師が、当時、季節的に早く出荷されて市場を席巻していた土佐キュウリに対抗するために、出荷時期が早くなるように改良したものが相模半白節成です。

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相模半白(左)は、上半分が緑色、下半分が白っぽく、市場では「河童」とよばれ、昭和30年代後半まで一世を風靡しました。(右は普通のF1キュウリ)

しかし、今ではこの相模半白、ほとんど生産されていません。なぜならば、今日本で生産されているキュウリのほとんどは、F1と呼ばれる一代雑種のキュウリだからです。

F1は、2種類の固定種を掛け合わせて作られた雑種の第1代目です。雑種の第1代目は、両親の持つ性質のうち優性な性質が現れ、劣性な性質は隠れます。

そしてその優性な性質が、味が良かったり、成長が良かったり、丈夫だったりというものが選ばれて、販売されます。これがF1、一代雑種です。

このF1同士を掛け合わせた第2代目は、優性な性質と劣性な性質が入り交じり、さまざまな雑種になってしまいます。だから、F1からは翌年用の種は取れず、毎年新たに種苗メーカーから種を買うことになります。

F1は、同じスピードで成長し、同じ大きさに育ちます。だから、畑を区切って時期を分けて種をまけば、それぞれの区画で同じスピードで順番に同じ大きさに育つので、農家は区画ごとに、同じ大きさになった野菜を一度に収穫することができます。

F1でない固定種は、種は同じでも、様々な遺伝子を持っているので、育つスピードや大きさにばらつきが出ることになります。畑の中で大きくなったものから収穫するので、同じ畑での収穫が長く続きます。もちろん種を取って、翌年、畑にまくことができます。

F1は:
成長のスピードがそろうので一度に出荷できます。
親を変えることで特定の形質を導入しやすくなります。
特定の病害にそろって耐病性を持つことができます。
農家は毎年種を買わなければなりません。

固定種は:
その種の元々の味を持っています。
それぞれの育つスピードが違うので、収穫が長く続きます。
同じ種でも多様な遺伝子を持っているので、環境に適応する力があります。
個体によって、様々な耐病性を持っています。
自家採種することができます。

それぞれにメリットがあるはずですが、市場で同じ規格のものが要求される今日、生産される野菜のほとんどがF1になってしまいました。

1924年に、埼玉県で巾着ナスと真黒ナスを掛け合わせてつくられた埼玉交配ナスが世界最初のF1野菜でした。その後、大阪でキュウリやトマトのF1が、奈良でスイカのF1が作られました。

もともと日本のスイカには縞がなかったそうですが、丈夫で輸送に適した外国の縞があるスイカが掛け合わされて、スイカに黒い縞ができるようになりました。

そして、白菜、芽キャベツ、ピーマン、カブ、大根、ほうれん草、タマネギ、メロン、ブロッコリ、にんじん、カリフラワー、トウモロコシ、春菊、キャベツ、レタス、ししとう等々のF1品種が次々と開発され、市場を席巻していきました。

野菜の固定種が、今、どんどん消えています。昭和30年代までは大手の種苗メーカーの種はほとんど固定種でした。しかし、今、ほとんどの種がF1になってしまいました。全国各地にあった、相模半白節成のような地方野菜はどんどん少なくなっています。

F1がなければ農作物の市場流通は難しくなります。しかし、家庭菜園でつくる野菜はF1である必要はありません。もし、あなたが家族で食べるために野菜を作ろうとする時は、固定種をつくってみませんか。



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