健康保険のマネーボール

2011.11.25

マイケル・ルイス原作の「マネーボール」の映画を見る。マイケル・ルイスは最初の「ライアーズポーカー」を読み、「ビッグショート」を読み、「マネーボール」を読んだ。ブラッド・ピットが主人公のビリー・ビーンを演じた映画のできもすごくよかった。

国会の事業仕分けで取り上げた四つのうち、一番地味だったのがレセプト審査の問題だった。

レセプトの審査は、支払基金と国保連という二つの役所のような組織が実施している。民主党政権の事業仕分けは、この二つの組織を統合せよという結論を出したのだが、何かの利権を失うのを恐れて厚労省はサボタージュを続け、統合は未だ実施されていない。

二つの組織を統合せよという結論は、安易だと思う。むしろ、レセプト審査に民間参入できるようにして、競争原理を持ち込むべき分野だ。

たとえば、ある組合員6000人の健保組合では、そのうち16人が虚血性心疾患にかかり、その健保組合の入院医療費の32%を使った。そして、そのうち3人の入院医療費で、その健保組合の入院医療費の16%を使った。

つまり全体の0.12%の人数で、入院医療費の32%が使われている。

過去のレセプト等のデータから、その健保組合(または国保)の問題を明確にすることができる。

たとえば一部上場の歴史のある製造業は、結果的に45歳以上の男性の割合が多く、虚血性心疾患による医療費が大きくなりやすい。

そして過去の健診、問診データから誰が次に病気になりやすいかを割り出すことができる。

50歳以上、男性、軽度の糖尿病、LDLコレステロールの値が一定値より高い..というデータから、虚血性心疾患になりやすい社員を特定できる。

そのハイリスクグループの健康を管理すれば、病気を抑えることができて、結果、医療費を下げることができる。

本来、ここまでやるべきなのだが、ほとんどの健保組合ではできていない。

なぜなら、健保組合の責任者は、社員のあがりポストである場合が多く、退職前の二、三年のポジションになりがちで、対策を打って結果を出すなどということに興味がない場合が多い。

本来、このポジションにビリー・ビーンのようなプロのGMを連れてきて、これまでと違った全く新しい管理を導入し、医療費を下げていくということを考えるべきだ。

そして能力のある人間がもっと大きな健保組合に引き抜かれて、さらに大きな医療費の削減をしていく。

病気になりたい人間はいないのだから、きちんとリスクを把握して予防をすることで医療費を下げられるということを、実際にいくつかの先進的な健保組合が実施し、成果を上げている。

本来、レセプト審査機関が、こうしたことを保険者に促していくべきなのだ。厚労省の天下りや現役出向のような人間が、惰性で今までと同じようなレセプト審査を続けていては何も変えられない。

出でよ、医療界のビリー・ビーン。



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