政策か政局か

2009.01.03

年末に、民主党の四人と自民党の三人で、年金の抜本的な改革案をまとめて発表した。

国会で記者会見しても、たぶん、内容は理解されないだろうから、厚生労働省の記者クラブで発表した。事前に七人で集まって、こういう質問が出たらどう答えるか、かなりテクニカルなところまで打ち合わせをした。が、...。

日経新聞がスペースを割いて解説をしてくれた他は、自民・民主両党の議員が改革案を発表したというところだけが小さく囲みで報道された。

問題は、改革案の内容で、それについて国民がどう思ってくれるかということが大事なはずだ。小泉内閣以来、年金の与野党協議がうまくいっていなかったが、今回、それができた。与野党の政治家がまとめた年金の改革案とはどういうものか、それに対して専門家がどう反応するかというのはとても大切なことだと思うが、どうもマスコミはそう思わないらしい。

自民党の三人は、百三十人の自民党議員を擁する議員連盟の会長、幹事長、事務局長といういわば野武士的なポジションだが、民主党の四人は民主党の年金改革に責任を持つ元代表、元政調会長、年金制度調査会長とその事務局長といういわば正規軍の司令塔だ。

その四人が出てきて、発表されている民主党案とは若干違う案を自民党と一緒になって作り上げ、これでいこうというのだから、かなり度胸がいる話だ。

一人で造反したワタナベヨシミ代議士よりも、この四人の正規軍の司令部のほうがインパクトが大きいと思う。

もはやマスコミは政策よりも政局しか報道しなくなってしまったのではないか。

年末に、何人かの先輩議員とマスコミと駄弁っているときに、ワタナベヨシミ代議士の造反と処分の話になった。
戒告という二番目に軽い処分になりましたが、という質問が出て、先輩方が、なぜか大笑い。

太郎ちゃん、起立採決に造反すると処分される時代になったね。いよいよ造反王河野太郎、離党かな。

喜美さんが起立採決に造反しただけで、戒告処分というのは、我々からすると処分が重くてびっくりである。

これまで二十回以上起立採決に造反してきた河野太郎でも、起立採決で処分されたことはあんまりない。介護保険導入のときには、石原伸晃代議士や根本匠代議士などと補正予算の採決で造反したが、全員おとがめなしだった。

もっとも自民党議員が起立採決で造反するときは、ほとんど周りが起立しているときに座っているだけだから目立たない。周りが座っているときに一人立つかたちの造反は、珍しいから目立つが、内容的には同じである。

起立採決の場合、会派ごとに賛否を記録しているので、無所属議員を除くと個人個人の投票行動は記録されない。だから、ヨシミさんが造反の証拠を見せてみろと開き直れば、執行部は彼が解散要求決議案に賛成したという公式の記録を出せないのではないか。

異議なし採決のときなどもっとひどくて、綿貫議長など、御異議ありませんか、という問いかけに、目の前で立ち上がって大声で、異議ありと叫んでいるのに、御異議なしと認めます、などとしゃあしゃあとシナリオ通りに読み上げていた。

そもそも解散要求決議案が可決されたとしても、それで衆議院が解散されるわけではない。衆議院が内閣に解散を要求しているだけであって、内閣がその要求を認めなければそれまでである。
衆議院の多数が解散を要求するならば、こんなインチキな決議案ではなく内閣不信任案を可決すれば、総辞職か解散になる。

もともと議院内閣制では、「政府に入った議員」は政府提案の案件には必ず賛成しなければならない。が、政府に入っていない与党議員には、政府提案の案件に賛成する義務はない。

野党が提出した案件に、政府に入っていない議員が、賛成しようが反対しようが、とやかく言われる筋合いは全くない。

イギリスの下院で国対を務めた議員が書いたBreaking the Codeという本を読むと、与党の議席が過半数を少し超えているだけのメージャー政権では、与党議員の造反で政府提案の案件がよく否決されている。

だから今回の造反に対する戒告処分は、党の執行部の過剰反応ともいうべきものだ。

でも、これがきっかけで、政府と与党の関係が正常化される方向にすすめば、ヨシミさんの日本の議会制民主主義に対する功績は非常に大きい。



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