キャリアパス

2007.11.13

わが事務所のインターンのモニカ(エストニアから筑波大学に博士号を取りに来ている。論文は日本のイデオロギーがどうのこうの)とティナ(イギリス の労働党議員の元アシスタントで大和日英基金で来日中)の二人に頼んで、96年初当選の自民党議員と97年初当選のイギリス労働党議員のその後のキャリア パスを調べて一覧表にしてもらう。

自民党の96年初当選の四回生二十二人からは棚橋、岩永、菅、渡辺の四人の大臣を輩出している。

沖縄県選出議員が当選一回で沖縄担当の政務官をやっている他は当選二回で政務官に就任。政務官を経験していない棚橋、渡辺を除き、全員が当選二回で政務官を一回から四回務めている。

当選三回から部会長がスタート。当選三回では七人が部会長を務め、当選四回の今日までに半分強の十三人が部会長を経験する。
このうち八人までが国対副委員長を経験していない。
なんとなくこのへんで国対族と政策系に分かれ始めている。

当選三回で棚橋が国務大臣に就任し、3人が副大臣を経験。農水副大臣から岩永が農水大臣に昇格する。

当選四回で、菅、渡辺が大臣に就任し、離党した滝以外の全員が副大臣を経験している。
さらに当選四回で衆議院の委員長が始まり、12人が委員長を経験し、平沢は拉致特と外務と二回、委員長に就任。

自民党の代議士は、当選一回はぞうきん掛け、二回で政務官、三回で部会長、四回で副大臣、委員長、その合間に国対副委員長または副幹事長というキャリアパスができている。

そこでティナの作ったイギリスの労働党のリストを見て、まず、びっくりするのが、任期ごとに造反投票回数という欄がある。
イギリスの本会議の投票は常に賛成と反対の通路に分かれて人数を確認するという方式なので、全てに記録が残る。
そして、労働党の議員がそれぞれ何回、労働党の方針と違う投票をしたかすぐに調べられる。

イギリスでは政府の役職に就いた議員は政府の方針に拘束されるが、採決の中には党議拘束のかからないFree Voteとよばれる採決もあるので、97年初当選の議員全員が何らかの投票で、党の方針と違う投票をしている。
法務閣外相のマイケル・ウィルスは97年から今日まで、造反が二回と最少で、ジョン・マクドネルはこの十年に最多の299回も造反している。

97年当選組は、ルース・ケリー、デス・ブラウン、アラン・ジョンソン、ジャッキー・スミス、ヘーゼル・ブレアーズの五人の現職閣僚を輩出している。
閣外相は13人、政務官クラスは13人。
その他に、政府の役職に全く就いたことがない議員がこの期で92人もいる。

ルース・ケリーは当選二回で政務官、財務閣外相、そして教育相として入閣。
デス・ブラウンは当選二回で政務官、雇用年金閣外相等、当選三回で国防相。
アラン・ジョンソンは当選一回で政務官、当選二回で雇用年金相として入閣。
ジャッキー・スミスは当選一回で政務官、当選二回で保健閣外相等、当選三回で内務相。
ヘーゼル・ブレアーズは当選一回でPPS(大臣付き秘書官)、当選二回で政務官、内務閣外相、当選三回で無任所相、地域相で入閣。
この五人は政務官になってから、途切れることなく閣外相、閣僚をずっと続けてきている。

閣外相13人のうち、政務官から閣外相になった者9人、PPSから閣外相になった者1人、日本の国対にあたるWhipから政務官を経て閣外相になった者3人。
Whipから政務官になった1人を除き、全員が当選一回または二回のうちに政務官になり、政務官になってから途切れることなく政府の役職に就いている。

政務官13人のうち、政務官からキャリアを始めた者5人、PPSから政務官になった者2人、Whipから政務官になった者6人。
このうち8人が当選二回でキャリアが始まり、当選一回でWhipからキャリアを始めた者1人、当選三回で政務官になった者2人。

つまりイギリスでは閣僚になろうとするならば、当選二回で政務官に選ばれるかどうかが分かれ目になる。
当選二回を無役で終えると、その後、政府の役職への道はほぼない。その代わり、政府に入らない議員は、委員会に所属し(イギリスでは法案審議の委員会と政 府の各省庁の活動を監視する委員会は別物で、全ての議員が政府の活動を監視するセレクトコミッティに所属するとは限らない)、委員会のメンバーとして活躍 する道を選ぶか(42人)、PPSとして総理や大臣をアシストするか(14人が今日PPS)、Whipとして活動するか(8人)というそれぞれの道を歩む ことになる。

日本と違って、みんながそれぞれ当選回数で役職を与えられるなどということはないのだ。当然といえば当然だ。

自民党も、イギリスを見習って、役職をたらい回しにするのではなく、能力や適性を見極めた人事が必要だ。役職がたらい回しにされていては、政治家が官僚を指揮できないのだ。



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