国益の再定義

2006.10.24

補欠選挙の真っ最中に、実はモスクワへとんぼ返りした。
五十年前の10月19日に鳩山一郎首相と河野一郎農相は日ソ共同宣言に署名した。
それから五十周年を記念して、モスクワで日ロフォーラムが開かれて、鳩山一郎の孫の鳩山由紀夫代議士と河野一郎の孫の河野太郎も参加した。ロシア側にはミコヤン漁業相の息子さん(もう相当お年だ)が出席していた。

これまで日本は北方領土四島の返還を一貫して言い続けてきた。
しかし、島は返らず、現状では共同宣言に謳われた二島も行く末がわからない。鳩山さんが、五十年経って孫が同じ話をしているとは鳩山一郎も思わなかっただろうとコメントされていたが、これからどうするべきなのだろうか。

日ロの経済関係は、人の往来も貿易も日中関係の二十分の一から三十分の一しかない。領土問題が日ロ関係の発展を妨げているのは間違いない。
日本にとって、ロシアの資源、特に天然ガスをはじめとするエネルギー資源は魅力だ。中東の石油への依存がかつてのオイルショック時よりも高くなっている日 本のエネルギー構造は極めて脆弱だ。石油が市場に流れ出れば、いくら価格が高くなろうと日本は経済力で石油を買い付けることはできるだろう。しかし、テロ などでペルシャ湾が封鎖される事態になると事態は急変する。
ロシアのエネルギー資源へのアクセス確保は国益でもある。
ロシア経済は確かにバブルではあるが、成長を続けている。ロシアのマーケットへのアクセスは始まったばかりだ。
他方、ロシアにとって、日本の投資と技術力は魅力的だ。とくに頭部武の開発に日本の協力は重要な要素だ。今のロシアには石油などの輸出かハイテク武器の輸出かという極端な構造になっているため日本の工場進出は魅力的だし、経済の格差の解消にも有効だ。
日本とロシアは、お互いに日ロ関係を深めていくことが国益につながる。
地政学的に考えても、日中、露中関係も、しっかりした日ロ関係があれば、それに刺激されて深まっていくだろう。
日ロ関係のなかで、なにが日本にとって、国益なのかという国益の再定義をするべき時がきている。
何も考えず惰性でこれまでの議論を繰り返すことはもはややめるべきだ。四島の返還と言えば誰からも批判されることはない。だからといってそれだけで良いという時代はおわったのではないか。
政治が勇気を持って決断を下す必要がある。

ロシア側の立場は一貫して、領土問題を議論するのは難しい。領土問題に触れなくとも、つまり平和条約がなくとも、トヨタや日産がロシアに工場進出を決めた。日ロの経済関係は動いている。だから平和条約よりも日ロ関係を深めていくことを優先しようと口を揃える。
日本側は、領土問題を解決しない限り、日ロ関係は深まっていかない、だからお互い知恵を出し合って領土問題を解決しようとメッセージを送った。
日本とロシアの双方が一歩ずつ、前へ出ることを考えなければ、五十年後にも同じことになってしまう。



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